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社説
9月5日付  北方領土にロ特区  信頼の醸成に水を差す  
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 ロシアのメドベージェフ首相が、北方領土を経済特区である「先行発展地域」に指定する文書に署名した。

 日本との協議を進めている北方領土での共同経済活動を巡って、ロシアが交渉のハードルを上げてきたという感が強い。

 共同経済活動に関して、日本は両国の法的立場を崩さない「特別な制度」の下での実現を目指している。

 このため日本が、ロシアの法に基づく形で開発が進んだり、第三国が参入したりしないよう、ロシアにくぎを刺してきたのは当然である。

 にもかかわらず、外国企業誘致などを目的に税制を優遇する経済特区の指定は、日本以外の国の企業活動を促進する可能性がある。

 日本の意向にそぐわない一方的な特区指定は、日ロの信頼醸成に水を差しかねない。

 日ロ間では、北方4島をクルーズ船で周遊する観光事業が経済協力の有力候補になっている。船による観光では島に上陸しないため、陸上での事業に比べて早期に実現しやすいという利点がある。

 日本が、ロシア法の制約をそれほど受けずに済む海上での事業の取りまとめを優先するのは、無理のないことだ。

 特別な制度について、日本は包括的な導入を目指すのではなく、クルーズ船観光やウニ養殖など個別事業ごとに制度交渉を進める方針である。

 7日にはロシア極東ウラジオストクで、安倍晋三首相とプーチン大統領の首脳会談が行われる。経済協力に向けて対話を加速させる狙いだが、特区指定の影響が懸念される。ロシアの主権下で開発を進めようとする思惑が透けて見えるからだ。

 ロシアの極東発展省によると、特区制度の下で、北方領土に74億ルーブル(約136億円)を投じて水産加工工場を建設し、700人以上の雇用を創出する計画がある。

 ロシアは、政策やインフラ整備で着々と北方領土の実効支配を強めている。択捉島に軍民共用の空港を整備したのは、その象徴といえまいか。

 交渉上手とされるロシアの意のままに経済協力を引き出された揚げ句、日本側が得るものはわずかという事態は避けなければならない。

 昨年12月、安倍首相の地元の山口県長門市で開かれた日ロ首脳会談で、領土交渉は期待外れに終わった。会談が近づくにつれてロシア側の姿勢が固くなり、領土交渉への期待値は下がっていった。

 足元を見透かしたかのように、揺さぶりをかけてくるロシアを相手にした交渉は一筋縄ではいかない。

 共同経済活動を進めるには、不動産の所有権や邦人が事件に巻き込まれた場合の法的措置など、解決すべき難題が山積している。

 これら重要な権利を巡って日本の主張が通らなければ、何のための経済協力なのか分からない。政府は、毅然(きぜん)とした態度で交渉に当たらなければならない。

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