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社説
9月10日付  臍帯血無届け移植  法律をどうすり抜けた  
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 期待が高まる再生医療の信頼性を傷つける行為である。
 
 他人の臍帯血(さいたいけつ)を国に無届けで移植したとして、再生医療安全性確保法違反の疑いで、東京のクリニック院長や、茨城県の臍帯血販売会社の社長らが逮捕された。
 
 安全性確保法違反容疑での立件は初めてだ。
 
 警察は、事件の全容解明を急いでもらいたい。厚生労働省などは厳重な再発防止策を講じる必要がある。
 
 臍帯血は、母親と胎児を結ぶへその緒と胎盤の中に含まれる血液で、血液細胞のもととなる「造血幹細胞」を多く含み、白血病など重い血液の病気の治療に使われる。
 
 第三者への提供を目的とする「公的バンク」と、新生児本人や家族の治療用に有料で預かる「民間バンク」で、冷凍保存されている。
 
 警察によると、臍帯血販売会社は、経営破綻した民間バンクから臍帯血を譲り受けるなどして、三百数十人分を販売した。
 
 業者などを通じて複数の医療施設が購入しており、移植を受けた患者は、約30都道府県に上る。安全性が不透明な臍帯血が使われた可能性もあり、由々しき事態である。
 
 移植の費用は1回当たり300万~400万円で、警察は、多額の利益を得ていたとみている。
 
 厚労省は5~6月、立ち入り検査した東京など12の医療機関が無届けで臍帯血を使っていたことから、投与の一時停止を命じた。
 
 造血幹細胞移植推進法では、白血病を含む27疾患の治療に使う臍帯血の提供は、厚労省が許可した公的なバンクが行う規定だ。臍帯血の安全性確保も定めている。
 
 27疾患以外の用途での移植は、安全性が確認されていないため、2014年に施行された安全性確保法に基づき、厚労省に計画を届け出る必要がある。厚労省によると、これまでに他人の臍帯血を移植する届け出はない。
 
 治療の詳しい実態を明らかにすることが大切だ。
 
 このところ、再生医療への注目度が高まる状況に便乗して、科学的根拠のない治療を高額で行う悪質な自由診療クリニックが横行している。中には、治療の選択肢がなくなった末期がん患者の弱みにつけ込むケースもあり、見過ごせない。
 
 厚労省は、再生医療の信頼性の確保に向けて、安全性確保法に基づいて厳しく取り締まる方針だ。
 
 日本再生医療学会の澤芳樹理事長は「信頼性の乏しい医療には安易に飛び付かないよう」に呼び掛けている。注意すべきだ。
 
 臍帯血の保管、流通の在り方も問われる。
 
 日本医師会は、民間バンクによる臍帯血など人体組織の保管や流通に関して、法的な規制を含め、厳格な監督・監視体制の整備を求める声明を出した。
 
 患者を守るためには、抜け穴のない規制が欠かせない。

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