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社説
9月14日付  桐生選手9秒98  新たな世界の扉を開いた  
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 桐生祥秀選手が陸上男子100メートルで、日本人初の9秒台を記録した。

 <9秒98>。福井県営陸上競技場の掲示板を見た観衆のどよめきと歓喜の声が、新しい日本記録の価値を物語っていた。

 伊東浩司選手が1998年のアジア大会で10秒00の日本新記録を出して19年。桐生選手が「10秒の壁」を破ったことで、日本の短距離陣は新たなステージを迎えた。歴史的な快挙を喜びたい。

 9秒台をマークしたのは桐生選手で126人目だが、大部分がアフリカ系の選手で、アジア人の9秒台スプリンターは珍しい。桐生選手は世界的な知名度を得て、海外の競技会に参加する機会も増えるだろう。超一流選手と戦うことで、技術と走力の向上も期待できる。

 桐生選手は「やっと世界のスタートラインに立てたのかな」と語った。目標とする五輪や世界選手権のファイナルに残るためには、9秒台の持ちタイムは最低条件になる。

 過去、五輪で100メートル決勝に進出した日本選手は、32年ロサンゼルス大会6位の故吉岡隆徳さんだけである。

 桐生選手が2020年東京五輪の決勝を走るためには、もう一段の飛躍が必要だ。

 桐生選手は13年4月、京都・洛南高3年生で10秒01をマークし、一躍脚光を浴びた。 9秒台は間近かとも見られたが、大学進学後は記録が伸び悩んだ。「4年間くすぶっていた自己ベストを更新できた」との言葉から苦闘の跡がうかがえる。

 10秒の壁は想像以上に厚かったようだ。伊東選手や朝原宣治選手ら歴代の名スプリンターが何度挑んでも、はね返された壁である。

 だが、一度、壁を突き破ると気が楽になる。「9秒台をコンスタントに出したい」と言う桐生選手が9秒台を連発する可能性はある。一昨年は追い風参考で9秒87を記録したほか、追い風なら9秒台かという走りも何度か見せた。

 今回は、公認の上限に近い1・8メートルの追い風が味方したが、無風状態でも9秒台を出せるようになれば、五輪のメダルも夢ではない。

 近年、男子短距離界の充実ぶりは目を見張るばかりだ。 選手層が厚くなり、400メートルリレーでは、昨年のリオデジャネイロ五輪で銀、今年8月のロンドン世界選手権で銅と、立て続けにメダルを獲得した。

 今か今かと注目された9秒台に桐生選手が一番乗りしたことで山県亮太、多田修平、サニブラウン・ハキーム、ケンブリッジ飛鳥らライバル選手も刺激を受けたようだ。

 いずれは、9秒台の選手4人で400メートルリレーを編成できる日が来るかもしれない。そうなれば、東京五輪が一層楽しみになる。

 桐生選手は陸上界はもちろん、社会に希望を与えてくれた。心の中を一陣の風が吹き抜けていく。そんな気がする快走だった。

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