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社説
9月23日付  原発避難千葉判決  予見可能性は認めたが  
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 国と東京電力は、福島第1原発に巨大津波が襲来することを予見できた―。司法が再びそう認定した。

 原発事故の影響で福島県から千葉県に避難した住民らが、国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟の千葉地裁判決である。

 津波の予見可能性を認めたのは、同種の訴訟で初の判決となった3月の前橋地裁に続き、2例目である。予見できなかったと主張する国と東電は、重く受け止めなければならない。

 損害賠償に関しては、東電に一部支払いを命じたものの、国の責任は否定した。「著しく合理性を欠くとは認められない」との判断だが、多くの人が古里を追われ、今も約5万5千人が県内外に避難している状況を見ると、首をかしげざるを得ない。

 提訴したのは18世帯の45人で、計約28億円の損害賠償を求めた。

 津波の予見可能性では、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した長期評価をどう見るかが争われた。

 長期評価は「福島沖を含む日本海溝沿いで津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」という内容だ。

 原告はそれらを基に、原発敷地高を超す津波が予見できたと主張し、国と東電は、長期評価は確立した知見ではなかったなどと反論した。

 これに対して判決は、長期評価に基づき「遅くとも06年までに敷地の高さを超える津波を予見できた」と断じた。

 予見可能性は、東電の元会長ら3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された刑事裁判でも、最大の争点となっている。刑事と民事の違いはあるが、2地裁が相次いで認めた意味は小さくない。

 前橋地裁が国、東電ともに賠償の支払いを命じたのに対し、千葉地裁は東電だけと、判断が分かれた。

 国への請求を退けたのは、東電に対策を取らせる義務まではなく、対策を取っても事故を回避できなかった可能性があるというのが理由だ。

 原発は、ひとたび重大事故を起こせば広範囲にわたって甚大な被害が出る。「安全神話」を振りまき、事業を推進してきたのは国である。その責任をあまりに小さく見ていないか。

 原告や被災住民らから、落胆の声が上がったのは当然である。

 東電の賠償額についても「重大な過失があったとは言えない」とし、約3億7600万円にとどめた。「対策を完全に放置したとまでは評価できない」ともしており、原告の納得は得られまい。

 一方で、故郷の風物や事故前の生活を丸ごと壊されたことに対する「ふるさと喪失」の慰謝料を認めたのは、画期的といえよう。

 原発避難者訴訟は全国で約30件あり、来月には福島地裁で、原告が約3800人と最大規模の訴訟の判決がある。被災者の思いをどう受け止めるのか。判断が注目される。

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