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社説
10月1日付  年金支給漏れ  ずさんな体質いつ改まる  
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 年金を巡る失態がまた明らかになった。

 1991年以降、公務員の妻ら10万人超に総額約598億円の年金支給漏れがあったと、厚生労働省が公表した。

 老後の生活を支える年金は大丈夫なのか。厚労省や日本年金機構は、不祥事が起きるたびに信頼回復に努めるとしてきたが、これでは安心どころか不安が募るばかりだ。

 再発防止の徹底へ、組織や制度の見直しをしっかりと進めなければならない。

 支給漏れは、夫婦の間で上乗せ部分を付け替える「振替加算」という制度で発生した。一度に判明した年金未払いとしては過去最大規模だ。

 公的年金では、65歳未満の配偶者を扶養する厚生年金や共済年金の受給者に、一定額を加算する「加給年金」という仕組みがある。いわば「老後の扶養家族手当」だ。

 配偶者が65歳に達すると終了するが、条件を満たせば配偶者が受け取る基礎年金に、年齢に応じて月約6千~1万9千円程度が上乗せされる。これが振替加算である。

 支給漏れとなったケースの96%は夫婦どちらか一方が、主に公務員が入る共済年金の加入者で、1人当たりの未払い額は平均約56万円、最高は約590万円にも上る。

 時効を適用せず、未払い分を全額支払うとしたのは当然だろう。だが、既に約4千人が亡くなっており、受け取る権利のある親族がいない場合は不支給のままとなる。関係機関の責任は重大だ。

 厚労省は、厚生年金の事務を担う年金機構と共済年金を扱う共済組合のシステム間で、夫婦の年金記録が情報共有されなかったり、事務処理を誤ったりしたのが原因としている。

 背景には、厚生年金と共済年金との間で、加入者の年金記録が別々に管理されてきたことがある。双方の連携が悪く、共済側から機構にきちんとした加入者情報が来ないといった例があったという。

 厚生年金と共済年金は2015年に一元化されたが、事務組織はそのまま残った。情報の共有や連携に問題があるなら、組織の統合を検討すべきである。

 年金支給開始年齢の引き上げという制度変更が重なり、支給事務が複雑になったのも要因とみられる。

 厚労省は再発防止策として、データ処理のシステム改修などを挙げるが、適正な人員配置や制度の簡素化も進める必要がある。

 何より重要なのは、全ての関係者が、国民の老後の安心に責任を負っているとの自覚を持つことだ。

 振替加算では、03年にも厚生年金で約300億円の未払いが発覚している。07年には、約5千万件の「宙に浮いた年金記録」問題が起きた。その反省から社会保険庁が解体し、年金機構が発足した経緯がある。

 意識改革を進め、ずさんな体質を改めなければ、年金への信頼は取り戻せまい。

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