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社説
10月2日付  三好市長の公約  政治不信を助長させるな  
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 公約は選挙に臨む政治家が有権者に示す契約書のようなものである。当選後は最大限の努力を傾けて実現しなければならない。何らかの事情で方針を変えるなら、誠実に説明するのが最低限の務めだ。

 三好市では、2013年の市長選で初当選した黒川征一市長が掲げていた「退職手当の全額カット」と「給与3割カット」という二つの公約が揺れている。

 いずれに対しても「公約違反だ」との指摘が反市長派市議のみならず、市民からも聞かれる。経緯を見ると、批判は当然だ。

 退職手当については、市長は7月に再選された後、1期目分の約1750万円(税込み)を受け取っている。

 返納すると、公選法で禁じられている寄付に当たる恐れがあるため、退職手当がほぼゼロになるよう条例改正するのが「全額カット」の一般的な方法とされる。黒川市長も支払い事務を担う一部事務組合に条例改正を提案したものの、他の首長の賛同が得られなかったと説明している。

 しかし、本当に実行するつもりだったのなら、そうした事情は先に確認しておくべきではなかったか。受け取る段階になって持ち出されても、素直にはうなずけない。

 市長が「公約は守る」と説明し続けているのもふに落ちない。公約違反を認めて謝罪するか、守る方法を具体的に示す以外に有権者の納得を得る道は残されていない。

 給与カットについては、黒川市長は再選された翌日になって初めて、2期目はカットをやめる考えを明言した。カットが続くと捉えて投票した有権者もいる。市長選前にはっきり示すべき情報だった。

 給与カットを廃止する条例案を9月になって市議会に提案した経緯も疑問だ。「1期目の公約」なら1期目が終わる前に諮るのが筋である。職員が条例改正の必要性に気付いていなかったと釈明するのは見苦しいと言うほかない。

 市議会が条例案を否決し、3割カットを継続させたのは賢明だった。

 黒川市長は初当選の4年前は296票差で、再選された7月は1164票差で、対立候補を退けた。二つの公約はいずれも関心が高く、得票に影響を及ぼした可能性が高い。真(しん)摯(し)な説明を求めたい。

 「公約違反」との批判を浴びた事例として思い起こされるのは、阿南市の岩浅嘉仁市長が「3期限り」という公約を翻す形で4選を目指して出馬、当選したケースである。

 岩浅市長の公約も投票行動に影響を与えた。裏切られたと感じた有権者は多い。

 各種選挙で投票率の下落傾向が続く。政治への信頼が薄れていることが一因だ。政治家が公約を軽んじていると、さらなる信頼低下を招くばかりである。

 衆院選が近く行われる。公約は選挙を勝ち抜くためのその場しのぎの方便であってはならない。政治家も有権者も改めて認識しておきたい。

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