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社説
12月7日付  エルサレム問題   米の首都認定は強引だ  
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 暗礁に乗り上げている中東和平交渉の道は、遠のくばかりだ。日本を含め国際社会に及ぼす影響も大きい。
 
 トランプ米大統領が、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、商都テルアビブの米大使館をエルサレムに移転する方針を決めた。
 
 エルサレムの地位は、イスラエルとパレスチナが交渉で決めるべきだとしてきた米政府のこれまでの方針を転換したものだ。
 
 エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地がある古都であり、その帰属問題は中東和平交渉の核心の一つといえる。
 
 東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置付けるパレスチナは反発している。イスラム諸国の反米感情が高まるのも必至だ。
 
 今後、中東情勢は混乱を極めよう。トランプ氏は方針を考え直すべきだ。米外交が保ってきた中立性を崩すことなく、交渉の仲介役を果たしていかなければならない。
 
 トランプ氏は、イスラエルやパレスチナ自治政府など中東の指導者と相次ぎ電話会談し、大使館移転の方針を説明した。イスラエル当局者は歓迎したが、パレスチナのアッバス議長が電話会談で「和平プロセス、地域と世界の安全や安定を危険にさらす」と警告したのは当然だろう。
 
 パレスチナ当局は、6~8日を「怒りの3日間」としてヨルダン川西岸で抗議活動を行うと発表した。
 
 中東和平交渉の早期再開は到底望めない。移転を強行するようなことになれば、暴動やテロが頻発する恐れがあり、過激派も助長させるだろう。取り返しのつかない事態に陥りかねない。
 
 過激派組織「イスラム国」(IS)掃討戦や、中東・北アフリカで米軍が展開する対テロ戦では、地域諸国の協力は欠かせない。それが得られにくくなる可能性もある。
 
 トランプ氏は、アラブ諸国のほか、フランスやトルコなど米国の同盟国も懸念を表明し、国際的な波紋が広がっていることを重く受け止めるべきである。
 
 これまでもトランプ氏の姿勢には、親イスラエルの色合いが濃かった。
 
 10月には、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退を表明した。教育や文化を通じて、平和に貢献するはずのユネスコが政治利用され、「反イスラエル的」だというのが理由だが、国連に批判的なトランプ氏の強い意向が働いたのは間違いない。
 
 今回のエルサレム移転も、公約の実現をアピールする狙いがあるのだろう。親イスラエルを打ち出し、和平交渉よりも公約を優先させることで何が得られるのか。
 
 トランプ氏は既に地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」からも離脱を決めている。
 
 米国内はもとより、国際社会の安定を損なうような一方的な外交姿勢は、到底看過できない。日本は、自制を促すべきである。

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