徳島新聞Web

1月18日(木曜日)
2 2
17日(水)
18日(木)
社説
12月20日付  巡航ミサイル導入  専守防衛が危うくなる  
このエントリーをはてなブックマークに追加

 防衛省が長距離巡航ミサイルを導入する方針を決め、2018年度予算案に約22億円の関連費用を追加要求した。

 小野寺五典防衛相は、日本を防衛するためだと説明している。

 だが、導入を予定するミサイルは、日本海の公海上から北朝鮮の内陸部にまで届く射程がある。保有すれば、日本にミサイルが向かう前に、相手の発射台などを破壊する「敵基地攻撃能力」を持つことにつながる。

 日本の安全保障政策の基本である「専守防衛」を逸脱するのではないか。強い危惧を抱かざるを得ない。

 巡航ミサイルは無人誘導で低空を飛行するため、レーダーに捕捉されにくく、長射程で精度が高いことから、艦船や地上の重要施設への限定攻撃に使われる。

 防衛省が求めたのは、射程約500キロのノルウェー製ミサイルの取得費と、米国が開発した同約900キロのミサイルに関する調査費である。

 小野寺氏は導入の目的として、北朝鮮のミサイル発射を警戒するイージス艦の防護や、離島防衛を挙げた。

 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の脅威は強まっている。海洋進出を図る中国の動向にも目が離せない。

 だからといって、イージス艦や離島を守るために、500~900キロもの射程の巡航ミサイルが必要だとは思えない。尖閣諸島と沖縄本島の距離は約400キロである。

 中国や北朝鮮をけん制する狙いがあるとしても、軍拡競争に陥ることは避けなければならない。

 政府は敵基地攻撃について、他に手段がない限り「法理上、憲法が認める自衛の範囲に含まれる」とし、合憲だと解釈してきた。

 1956年には、当時の鳩山一郎首相が「わが国が誘導弾等によって攻撃された場合、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」と答弁している。

 それでも、日本は長距離爆撃機や長射程のミサイル、攻撃型空母は持たなかった。防衛力を自衛のための必要最小限度とし、相手の侵攻をその都度撃退するという専守防衛を堅持してきたためである。

 安倍晋三首相は先日、「防衛計画の大綱」の見直し議論を本格化させる考えを表明した際、「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めたい」と述べた。

 専守防衛が「大前提だ」と強調したものの、敵基地攻撃能力の保有に含みを持たせたとも受け取れる発言である。

 見過ごせないのは、自衛隊を防衛の「盾」、米軍を攻撃の「矛」としてきた日米安保条約の根幹を変容させかねないのに、国民に十分説明せず、長距離巡航ミサイルの導入方針を決めたことだ。

 安倍政権のこうした姿勢に、野党が「極めて危険だ」と反発したのは当然である。来年の通常国会でしっかりと議論しなければならない。

メニュー
 徳島ヴォルティス        高校野球
 社説        鳴潮           号外       地震
 ニュースリリース           不審者
 人事       訃報