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社説
12月29日付  海外回顧  「力こそ正義」から脱却を  
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 力こそ正義-。そんな乱暴な考えが、再び国際社会を揺さぶり始めた年。2017年は、そう記憶されるかもしれない。
 
 主役を挙げるとすれば、まずは、この人をおいてほかにはいない。1月に米国の第45代大統領に就任した共和党のトランプ氏である。
 
 「米国第一」を掲げ、執務初日、環太平洋連携協定(TPP)から離脱する大統領令に署名。6月には地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から、10月には国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退を表明し、米国第一主義をいよいよ鮮明にしている。
 
 しかし内政では、ロシアによる大統領選干渉疑惑などがくすぶっており、まれにみる低支持率が続く。
 
 政権運営が一向に安定しない中、今月6日には、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、商都テルアビブにある米大使館を移転させると宣言した。中東情勢に大きな混乱をもたらす一方的な態度表明である。
 
 国連総会の緊急特別会合では、認定の撤回を求める決議案が圧倒的多数の賛成で採択された。各国の声を無視していては、いずれ孤立を深めることになろう。
 
 何かと対米追随が指摘される日本も、この問題に関しては米国に同調しない立場だ。当然の判断であり、事実上、仲介役の地位を失った米国に代わって、中東和平で存在感を示すべき時ではないか。
 
 東アジアでは、「力を通じた平和」を唱える米国の脅威に対抗するとして、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させている。こちらも国際社会の懸念はどこ吹く風である。過去最大規模の核実験を行ったほか、弾道ミサイルの発射を繰り返している。
 
 挑発行動をやめない北朝鮮を翻意させるには”後見人“である中国が重要な鍵を握っている。ところが、その動向には、きなくささすら漂う。
 
 5年に1度の共産党大会で政権基盤を盤石にし、「1強体制」を確かにした習近平総書記は、「強国建設」を声高に叫ぶ。欧州までも視野に入れた現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を提唱し、南シナ海の海洋権益確保も狙う。周辺国の不安を顧みることなくアジアでの新秩序確立に力を注いでいる。
 
 経済的にしろ、軍事的にしろ、大国が身勝手な行動を取れば、行き着く先は、人類が2度までも経験した大戦の歴史が示す通りだ。
 
 分断や排除の論理が大手を振って歩き始めた世界で、一筋の光となったのは核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル賞受賞だろう。一人一人の良心が国家を動かし、核兵器禁止条約の採択にこぎ着けた。
 
 この1年、ないがしろにされてきた国際協調、共存の思想をいま一度、世界の本流に引き戻さなければならない。「平和国家」日本の果たすべき役割は大きい。

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