空き家再生-Vol.3

 

少子高齢化時代における都市部の空き家問題

img24都市部と農村部では、空き家活用の視点は大きく異なります。田舎では地域コミュニティや豊かな自然環境を重視するのに対し、都市部では勤務先や学校との距離などの不動産的価値を優先する傾向があるようです。県内の都市部でも少子高齢化が進行する中、空き家を地域の共有財産として捉え、その使い方を再考することが必要とされています。ここでは、徳島大学総合科学部地域計画学研究室で、都市計画やまちづくりを研究する田口太郎さんに、都市部における空き家活用の課題と、その可能性についてお話を伺いました。

都市部における空家の価値 

徳島大学総合科学部 准教授田口 太郎さん

地域計画の一環として空き家活用に取り組む田口さん

地域計画の一環として空き家活用に取り組む田口さん

 徳島大学で「市民による自律的なまちづくり」に向けて積極的に取り組んできた田口さんは、徳島が抱える空き家活用の現状と課題について次のように話し始める。
 「徳島の空き家活用は、田舎の集落が過疎化を防ぐために取り組んでいる古民家再生のケースがほとんどです。その一方で、都市部における比較的新しい建物の活用事例は、あまり見当たりません。人口減少や高齢化は都市部の問題でもあるため、地域としての体力が残っているうちに、空き家活用の議論を始める必要があります」
 農村部と比べ、都市部では空き家の価値を不動産などの「個人資産」として捉える傾向が強い。都市部における空き家活用を考えるにあたっては、まずその違いをしっかりと認識しておく必要がある。 

地域の共有財産としていかに活用するか

「田舎で空き家活用を求める人は、古民家思考が強いですね。その中でも、のんびり一人で暮らしたい人と、地域社会とのつながりを大切にしたい人に分かれています。逆に都市部で空き家を求める人は、田舎に比べてライフスタイルへのこだわりは、そこまで強くありません。子どもの学校や職場への距離、公共交通機関の使いやすさなど、不動産的価値でものが見られることが多いと思います」
 また、都市部では地域コミュニティも衰退傾向にあるため、地域をなんとかしていこうという動きも少ない。その意識を変えることで、空き家活用の可能性は大きく広がると田口さんは言葉に力を込める。
 「景観が社会的価値を持っていることと同じで、建物も個人資産であると同時に社会的な存在でもあるのです。あまり他人のものとして考え過ぎてしまうと、結果的にいろんなものが地盤沈下していく。いかにして地域のために役立てるかを考えることが大事。空き家を放置するのではなく、『地域のために、どう使うか』を考えてほしい」
 放置すれば負の財産になる空き家も、上手に活用すれば地域が活力を取り戻すきっかけになる。そのために必要となる視点の一つが「地域との関わり方」と言える。

住民の居場所として空き家を捉えてみる 

たとえば、増え続ける高齢者の「居場所」として活用するのも、都市部における空き家活用法の一つ。
 「少子高齢化の波は都市部にも押し寄せており、一人暮らしのお年寄りの居場所も少なくなっています。もし、自宅から歩いていける場所に自分たちの居場所があれば、毎日の暮らしは今までよりも豊かになるはずです。また、家主の協力を得た上で、住民で共同管理を行うことで「自分たちの居場所を守る」という責任感も生まれる。受け身ではなく、自主的に第二の人生を創造できる空間として活用してほしい」
 

人が集まりやすいよう開放的に改修した佐那河内村の自宅

人が集まりやすいよう開放的に改修した佐那河内村の自宅

人の気配がない空き家は動物の住処となり、防災面や防犯面でも地域を脅かす存在となる。しかし、地域ぐるみで活用すれば、かけがえのない地域の拠り所となる。空き家を「地域資源」と捉えることで、活用のアイデアが大きく広がっていくことが分かるだろう。

地域や建物の価値に気づいてほしい

 実は田口さん自身も移住者の一人。
今は佐那河内村の古民家を改修し、集落の中で家族とともに暮らしている。
 「県域が狭く、自然豊かな地域と都市が近接していることも徳島の魅力。
小さな集落に暮らしながら、県の中心部まで約30分で移動できる環境は全国でもほとんどありません。価値観が多様化する中で、今後は二拠点居住のようなライフスタイルがあってもいい。
まずは、自分たちの地域が大きな可能性を持っていることに気づいてほしいですね」
 空き家活用を成功させるためには「自分たちが主体になる」という意識を持つことが重要と田口さん。行政は補助をすることしかできないため、地域の人々の関わり方が今後を大きく左右すると話す。
 「空き家活用を突き詰めると、最終的には地域自治の話になっていく。その受け皿の一つとして、空き家活用や移住促進、まちづくりなどを捉えてほしいと思います」
 田舎のような切実さはないが、確実に忍び寄る都市部の空き家問題。そこに光を灯すのは、住民たちの意識であることは間違いない。

Profile

田口 太郎さん
1976年神奈川県生まれ。1999年早稲田大学理工学部建築学科卒業。
2001年同大学院修了。小田原市政策総合研究所特定研究員、早稲田大学助手、新潟工科大学建築学科准教授を経て、2011年より現職。博士(工学)。専門は地域計画・まちづくり。市民による自律的なまちづくりについての実践及び研究を行っている。

トライブ_01