「愛というものが、私にはよく分かりません」-。弁護士から「お母さんに愛されていると感じたことは」と聞かれ、被告が答えた言葉だ
事件の背後には、多かれ少なかれ、こうした生い立ちの不幸があるものだ。母親を殺害し、県内初の裁判員裁判として注目された東みよし町の放火殺人事件。被告人質問でのやり取りを報じた8日付本紙社会面を読んで、冒頭の言葉がずしりと胸に残った
被告の母親は計算問題がうまく解けない被告を「学習障害児」と呼び、授業参観にも行かなかったという。「(妹や弟がほしいと言うと)『あんただけでうんざり』と言われた」とも述べている
それでも「今は申し訳なく思っている」と話した被告に、裁判員は情状酌量の余地を見て取ったのだろう。懲役18年の求刑に対し、懲役11年の判決を下した
「ありがとうございます」。判決言い渡し後、感謝の言葉を述べる被告の姿を見て、数人の女性裁判員が「母親の気持ちになって涙が止まらなかった」と記者会見で声を詰まらせたそうだ。裁判員裁判ならではの光景だろう
先日、市民のこんな声も聞いた。「最初は裁判員なんて嫌だと思っていたけど、裁判の記事を読むうちに興味がわいてきた」。選ばれれば前向きに取り組みたいと言う。より市民に開かれた裁判員裁判へ、裁判所側の工夫も求められる。
|
|
|
|