名ピアニストの一人、マルタ・アルゲリッチさんはコンクールが嫌いだった。1957年、16歳のときブゾーニ国際ピアノコンクールで優勝するが、10日後のジュネーブ国際ピアノコンクールを控え、急に怖くなる
友人の家で夜更かしをし、コンクールに意識的に遅刻した。審査員はすでに引き揚げていたが、友人が交渉すると彼女のピアノを聴くために戻ってきた。そして、ここでも優勝する
青柳いづみこ著「ピアニストが見たピアニスト」に、そんなエピソードが載っている。徳島文理大で開かれた第1回徳島音楽コンクールを聴きながら、その話を思い出した
出場者の緊張感が客席まで伝わってきて、痛々しいほどだ。アルゲリッチさんでも逃げ出したくなったのだから無理もない。無責任な聴衆の一人としては出場者全員に賞をあげたくなった
弦楽器部門の大学・一般の部で金賞を射止めたのは、徳島市出身で桐朋学園大音楽学部2年の寺内詩織さん。昨年の日本音楽コンクール・バイオリン部門で3位になった若手のホープである。演奏が始まった途端、会場の空気が一変した。今後の活躍が楽しみな一人だ
残念なのは一般の入場者が少なかったこと。来月28日午後3時から同大で入賞記念コンサートが開かれる。徳島初の本格的な音楽コンクールである。県民の手で大きく育てたい。
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