徳島出身の文化人は、多かれ少なかれ、子どものころに見た人形浄瑠璃の記憶を体の奥に染み込ませているようだ
作家の瀬戸内寂聴さんは、箱廻(はこまわ)しの演じる物語を通して、人生には恋愛や別れがあることを感じながら育った。その意味で人形浄瑠璃が「文学の原点」と言う。作曲家の三木稔さんも浄瑠璃が身の回りにあり、長じてオペラ「じょうるり」などを作曲した
牟岐町出身のフラメンコ舞踊家・小島章司さん(70)も例外ではない。浄瑠璃や義太夫などの伝統芸能に親しんできた自分をフラメンコで表現したいと創作に励み、能や源氏物語などをモチーフにした作品を生み出している
そうした活動が認められ、本年度の文化功労者に選ばれた。日本の第一人者として、フラメンコの普及や指導に当たってきたことも高く評価された
スペイン内戦時に反戦を訴えたチェロ奏者のカザルスや銃殺された詩人のロルカ。彼らをテーマにした作品もつくっている。年を取るにつれて「心の安らぎや平和への願いが強くなる」と小島さん。戦争の時代をくぐり抜けてきた世代ならではの感慨だろう
古里への思いも強まるようだ。「感性をはぐくんでくれた牟岐町に感謝したい」と受章を喜ぶ。美しい故郷の海、人形浄瑠璃の思い出・・・。豊かな記憶を体の奥に畳み込んで、小島さんの挑戦はまだまだ続く。
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