「善き人のためのソナタ」という映画をご存じだろうか。2007年に「徳島でみれない映画をみる会」の例会で上映され、その年のアカデミー賞・外国語映画賞を受賞したドイツ映画である
舞台は1984年、東西冷戦下の東ベルリン。秘密警察シュタージ局員の主人公が、劇作家とその恋人を監視するよう命じられる。反体制の証拠をつかむのが目的だったが、盗聴器から聞こえてくるのは自由な思想と愛、そして美しいピアノソナタ。主人公はやがて、その世界に引かれていく
旧東ドイツの息苦しい現実と、主人公のヒューマンな生き方が心に染みる作品だ。国民の逃亡を防ぐため、旧東ドイツが建設した「ベルリンの壁」が1989年11月9日に崩壊して20年。喜びに沸く記念式典を見て、この映画を思い出した
ドイツのメルケル首相も旧東ドイツ育ち。壁崩壊の日、35歳の物理学者だった首相は、壁がなくなったら行こうと約束していた西ベルリンのレストランに母親と行ったと“興奮の日”を振り返る
翌年には東西ドイツが統一。だが、旧東ドイツ国民がすべて幸福になったわけではない。旧西ドイツの2倍に上る失業率、貧富の差の拡大・・・。見えない壁が新たに立ちはだかる
その壁は日本にも存在する。ハンマーでは壊せない。ヒューマンな政治の意志と、賢者の豊かな知恵が必要だ。
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