学生時代だったか、シャルル・プリニエというフランスの作家の小説「醜女(しこめ)の日記」を読んだことがある。1952年に発表された作品だ
自分の容姿にコンプレックスを抱いている主人公の女性が、恋人に喜ばれたい一心で整形手術を受ける。しかし、恋人は喜ぶどころか、逆に彼女から離れていってしまう。確か、そんなストーリーだった
日本でも、昔に比べると若い女性が気軽に整形手術を受ける時代になった。整形をして自分に自信が持てるようになったとか、明るくなったといった話もテレビでよく見かける。しかし、「醜女の日記」にもあるように、誰もがうまくいくというわけではないようだ
英国籍の英会話講師リンゼイさんの死体遺棄容疑で逮捕された市橋達也容疑者も、そんな一人だろう。捜査をかく乱するために整形手術をした顔が連日、新聞やテレビで公開され、それが“命取り”になってしまった
「醜女の日記」の悲劇的な結末には多少の同情を覚えても、市橋容疑者の整形手術には違和感を禁じ得ない。それは、前者の動機が人への好意に発しているのに対し、後者は徹底して人を欺くためのものだからである
顔には整形手術ができても、心にはできない。愛する娘を亡くし、悲しみに暮れるリンゼイさんの両親のためにも、警察の取り調べには“素顔”で応じてほしい。
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