サリンジャー。何とも懐かしい名前だ。青春のにおいがぷんぷんする。本紙の読者の中にも、若いころに「ライ麦畑でつかまえて」を読んだという人は少なくないだろう
成績不振で高校を放校になった16歳のホールデン少年の孤独や偽善に満ちた大人社会を描いたこの青春小説。1951年に刊行されて以来、“若者のバイブル”として長年、読み継がれてきた。世界で6500万部以上も出たのは、この作品が時代や場所を超えた普遍性を持っている証しである
日本では2003年、村上春樹さんの新訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も出て「ライ麦畑-」人気が再燃した。そのサリンジャー氏が91歳で亡くなったという。驚いた。もうとっくに鬼籍に入ったとばかり思っていたからである
「ライ麦畑-」で大きな名声を得たあと、田舎町で隠遁(いんとん)生活を送り、50年以上も新作を発表していなかったというのだから無理もない。公の場に姿を現さず、取材やインタビューにもほとんど応じていなかった
絶筆していたわけではないようだ。かつての恋人によると、少なくとも2編の小説が大切に保管されているという。15作品以上が未刊行という、サリンジャー氏本人による情報もあるようだ
なぜ発表しなかったのか。そうすれば、ファンが大喜びしただろうに。どこまでも謎の多い作家である。
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