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10月20日(金曜日)
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鳴潮
8月29日付
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 かれこれ、20年近く前のことだ。「芸人になりたいんです」と、中内正子さんは言った。何と酔狂な。そう思った。いつまで続くことやら。意地悪な予想は外れて、今日に至る
 
 中内さんが代表を務める「阿波木偶(でこ)箱まわし保存会」が、地域文化の活性化に貢献した個人や団体を顕彰する「サントリー地域文化賞」を受ける。パートナーの南公代さんをはじめ、たくさんの人に支えられての受賞である
 
 消え入りそうな火にまきをくべた人。中内さんの功績を手短に言えばそうなる。三番叟(さんばそう)まわしは部落差別と結びついた芸だった。自分の代で廃業と決めていた師匠の門を、何度断られてもたたき続け、手ほどきを受けた
 
 最初は見られた芸ではなかった。おや、と思い始めたのは、何年か後、門付けに同行したときである。中内さんらを自宅に迎え、えびす人形の手をじっと握り、涙を流すお年寄りがいた
 
 東日本大震災の被災地、宮城県内の仮設住宅での公演でも、同じ涙を見た。人は人形の向こうに、何か大切なものを感じ取るのだろう。保存会が届けたのは芸ではなく「希望」だった
 
 三番叟まわしは本県に伝わる正月の祝福芸。保存会の活動がなければ、いずれは絶えていた。それが今や海外公演を行うほどに。伝承教室も複数生まれている。中内さんがくべたまきは確かな炎となった。

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