NEXTアジア 現地ルポ② ウラジオストク

アジア経済ビジネス情報の“NNA”『カンパサール』

ロシアの東アジア玄関口 存在感示す日系商品

成田から飛行機でわずか2時間。こんなところに「次のアジア」があった。ロシア極東の都市ウラジオストクは、町並みは完全にヨーロッパだが、中国や韓国、日本に近いことからアジアの商品が身近な市場だ。その中でも日系商品は品質の高さが評価され、ビールからインスタント食品、トイレタリーまでさまざまな分野で存在感を示していた。

 浸透する日系企業

プレミアム市場で認知度ばっちりアサヒビール

ウラジオストクのスーパーでは、ほぼどこでもアサヒビールの商品が買える。「アサヒスーパードライ」のほか、黒ビールの「ドライブラック」、発泡酒の「アサヒ本生アクアブルー」。ロシアでは「発泡酒」の区分が無いため、いずれも同じ価格(500ミリリットルで139ルーブル=約220円)だった

ウラジオストクのスーパーでは、ほぼどこでもアサヒビールの商品が買える。「アサヒスーパードライ」のほか、黒ビールの「ドライブラック」、発泡酒の「アサヒ本生アクアブルー」。ロシアでは「発泡酒」の区分が無いため、いずれも同じ価格(500ミリリットルで139ルーブル=約220円)だった

「アサヒスーパードライ」は、ウラジオストクを含む極東ロシアで最も知られている日本ブランドの一つといえるだろう。アサヒビールは1998年からハバロフスクを通じてビールを輸出。輸出事業の範囲はウラル山脈より東側のアジア・ロシア※だが、主な市場はウラジオストクを中心とした極東地域だ。

スーパードライは350ミリリットル缶、500ミリリットル缶、小〜大びん、10リットルたるなど、幅広いラインアップを展開している。ウラジオストクのスーパーマーケットでは、ほぼどこでもスーパードライが売られている。

アサヒビール経営企画本部国際部の深山清志部長は「プレミアム市場で日系ビールの中では非常に高いシェアを維持している。極東はもともと日本の製品が普及し、理解度が高いため、日系商品にファンが付く環境が整っている」と話している。

同社はウラル山脈以西の欧州ロシア※では異なる事業戦略を展開。2008年には地場大手バルチカとライセンス契約を結び、現地産のスーパードライを販売している。ただ、欧州ロシアは競争が激しい上にアジアの商品が身近ではないため、「アジアロシアとは市場が全く異なる」(深山部長)。ここ数年は欧米諸国からの経済制裁やルーブル安を背景とした消費の弱まりが響いているが、今後の日露関係の改善などが進めば、ロシアでの日系ビールは伸びる余地が大きいと同社はみている。

※ロシアはウラル山脈を境に欧州部分とアジア部分に分けられる。西側の欧州ロシアはロシア全人口の8割近くを擁する

街で発見

ダイドードリンコ、ロシア自販機事業の足がかりに

海辺につながるアドミラーラ・フォーキナー通りでは、ケバブなど軽食を売るキオスクが立ち並ぶ一角にダイドードリンコの自販機が設置されていた

海辺につながるアドミラーラ・フォーキナー通りでは、ケバブなど軽食を売るキオスクが立ち並ぶ一角にダイドードリンコの自販機が設置されていた

ウラジオストクの空港や港湾施設、商業施設が集まる道路を歩いていると、おなじみのダイドードリンコの自動販売機が姿をあらわす。飲料は全て日本からの輸入で、商品カテゴリーは日本のものと変わらない。値段は、「デミタスコーヒー」が最も安く70ルーブル(約120円)。最も高い商品は果汁飲料「さらっとしぼったオレンジ」の100ルーブルだった。街中にある小型の売店(キオスク)で売られているコーラ(500ミリリットルで60ルーブル)などに比べて割高だが、「おいしい」「ヘルシー」と現地の消費者に好評だ。同社によると、売れ筋は、炭酸飲料「ミスティオ グレープ」。現地消費者の健康志向が高いことから「エナジージム」も好調という。

ラインアップは日本とほぼ同じ。500mlのペットボトルなど容量の大きい商品が売れているという

ラインアップは日本とほぼ同じ。500mlのペットボトルなど容量の大きい商品が売れているという

ダイドードリンコは2008年からこれまで、ウラジオストク市内に自販機を百数十台設置している。日本の中古車を輸入している現地の業者から自販機ビジネスをしたいと申し出があったのがきっかけだった。

ロシアではウラジオストクでの事業が契機となり、モスクワ市と自販機を設置する契約を交わしている。

身近な日本ブランド

ウラジオストクを歩いていると、日本の商品が現地で確実にブランド力をつけていることがいろいろなところでうかがえる。スーパーでは、アサヒスーパードライのほか、日清の即席めん、UCCのドリップコーヒーなど、日持ちのする日系食品が当たり前のように売られている。日本のトイレタリーを専門に扱うチェーン店もあった。地場メーカーのほか、欧州や韓国の企業もしのぎを削る中で、日本の商品もしっかりと存在感を示している。

市内にはメード喫茶風の日本食レストランも。店内の装飾は日本の「カワイイ」要素をふんだんに取り入れ、女性従業員はみなメード風の制服を着ている  

市内にはメード喫茶風の日本食レストランも。店内の装飾は日本の「カワイイ」要素をふんだんに取り入れ、女性従業員はみなメード風の制服を着ている

情報配信事業や貿易事業を手掛けるJSN(新潟市)は、日系企業の中では早い時期からロシア極東への輸出を展開している。扱うのは、コーヒーやカップ麺、しょうゆ、その他菓子などが主で、商品は現地資本のスーパーや日本食材専門店など小売店に並ぶ。同社が極東への輸出事業を開始したのは2000年。当初はトイレタリーや日清の「カップヌードル」などを扱っていた。2000年代前半は中古車やエンジンオイルなど自動車用品以外はほとんど日本の消費財は出回っていなかったが、アジアに数年後れる形で、紙おむつやトイレタリー、インスタントラーメンが急激に伸びた。現在は、リーマンショックから続く景気の落ち込みで苦しい時期だが、一番景気が良かった頃は、「モノを持って行ったら何でも売れる状況」だった。

こうした日系企業の輸出業務によって、高品質な日本ブランドは現地に根付いていった。

文・写真 カンパサール編集部 大石秋太郎

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