未来の生活どうデザイン 新市場開拓する4人の徳島県人

「未来の生活をデザインする」をテーマにした人材育成セミナーが12日、徳島市の四国大交流プラザであった。登壇したのは、研究者や経営者として従来にない、新たな市場の開拓に挑む30代の県出身者4人。いかに自らのキャリアをデザインしてきたか、古里への提言など活発な意見交換が行われたトークセッションの様子を紹介する。(地域連携推進室・湯浅翔子)

<登壇者>

  • 東京大大学院准教授 川原圭博さん
  • コグニティ社長 河野理愛さん
  • フラッグ社長 久保浩章さん
  • ルクサ執行役員 瀬尾萌さん

<司会>徳島市立高校放送部 藤田ひかるさん

東京大大学院准教授 川原圭博さん

紙の上に電子回路基盤

デザインという言葉は「新たな技術をどう社会に役立てるか」という工学系研究者の物の考え方をよく表現している。米アップルの製品は一般的にデザインに優れると言われるが、そのつくりは極めてシンプル。顧客の要望を聞くとどんどん機能が膨らみ、結果的に使いづらいものが生まれる。ユーザーの観察から問題の本質をつかみ、その改善策を提案するデザイン思考が重要な時代になった。
われわれがデザインする「ちょっと先の未来」を紹介したい。3Dプリンターが登場した現代でも、心臓部となる電子回路は高価な装置を使わないと作れなかった。そこで発表したのが、銀の微粒子が入ったインクと家庭用プリンターを使い、紙の上に即座に電子回路を作る技術だ。
外注で1週間、1万円かかっていた基盤製造が、年賀状を刷るように1枚100円程度でできる。品質は従来品に劣るが、安さと速さで圧倒的な優位性があり、新たな使い方ができるようになる。
その一つが、低コストで提供する農業用土壌水分センサー。世界中で干ばつの問題が発生しており、限られた水資源を有効に活用してもらうのが狙いだ。
事業化は大変だが、社会に影響を与えられるのがやりがい。製品として世に出せば、思いがけない使い方をしてくれる人も出てきて面白い。

かわはら・よしひろ 
1977年、三好市生まれ。脇町高、東京大卒。大学での研究を基に2014年、電子回路の印刷技術を開発する会社AgIC(エイジック、東京)の設立に参画し、技術顧問。

コグニティ社長 河野理愛さん

会話解析し営業力強化

中学時代にインターネット上でトレーニングやけがなど、スポーツ科学に関する情報発信を始め、それを事業化するべく上京した。大学在学中にNPOを設立したが、経営者としての力不足を感じ、経験を積むため大企業に就職した。しかし業界が低迷する中、悩んだ末に起業を決めた。
コグニティのテーマは「思考バイアスを取り除く」。人の視野は案外狭く、どうしても思い込みや偏見が働いてしまう。そこを技術の力で解決したい。
16年に発表した「アップサイター」は、分かりやすく言えば売れる営業マンと売れない営業マンの「差」をひもとくサービスだ。営業マンのトークを録音し、独自のシステムで会話の論理性や関連性などを分析して定量的なデータとして評価する。営業の強化方針や、新人の指導を支援するツールとして上場企業や省庁など29社に導入された。
働き方のテーマも決めている。人にしかできない創意工夫のある仕事で大量雇用したい。その手段の一つとして、全従業員が完全在宅勤務できる体制を整えた。
私自身、「若すぎる」「女性一人」といった見方をする人もいる中で、チャンスを与えてくれた人がいたから今がある。だからこそ、どんな人にもバイアスのない判断を受けられる機会を提供していきたい。

かわの・りえ 
1982年、上板町生まれ。徳島市立高、慶応大卒。ソニー、DeNAを経て2013年、コグニティ(東京)を設立。人工知能(AI)による会話の解析システムを開発。




フラッグ社長 久保浩章さん

映画のPRへ動画配信

2001年、大学3年の時にフラッグ(東京)を創業した。テレビCMなどの映像やウェブコンテンツの制作、インターネット上でのプロモーション事業を手掛けており、中でも映画・エンターテインメント関連の仕事が全体の3割を占める。
創業当時、日本の映画界は興行収入が過去最低を更新するなど非常に落ち込んでいた。特に邦画が振るわなかった。学生なりにいろいろ調べて出した結論は「日本の映画界には優秀な作り手がいるが、どうやって売るかを考える人がいない」ということ。ならば自分がやろう、と。
しかし会社をつくったはいいが、何をすればお金になるのか分からない。クレジットカードのキャッシングでお金を借りて従業員に給料を払った。
転機は03年、ブロードバンドの普及を背景に、映画の完成報告会見などを取材して動画を配信するサービスを始めた。映画会社との人脈もでき、映画の公式サイト制作やPR活動の依頼が舞い込むようになった。現在は、もともと東京で働いていた仲間がUターンするのを機に、松山や沖縄にも拠点を開設している。
普通は落ち目の産業では起業しない。でも映画界の場合、問題点が明確だった。弱点に対し「自分たちはこんなことができる」と提案できれば、勝ち目はあると思う。

くぼ・ひろあき
1979年、小松島市生まれ。徳島文理高、東京大卒。大学在学中に起業し、映画の広告宣伝などを手掛ける。映画学校ニューシネマワークショップ代表。




ルクサ執行役員 瀬尾萌さん

提案型通販サイト運営

新卒で入った外資系金融機関では最も勤務時間の長い部署に配属され、激務をこなした。入社の年にリーマン・ショックが起こり、同じフロアで働く人の2割が肩をたたかれて即日いなくなるという経験もした。
3年目で退職し、ルクサの設立に携わった。ゼロからのスタートで、現在は300人の従業員を抱える。15年に通信大手KDDIの傘下に入った後は、1年ほど同社に出向して協業体制を整えた。
ルクサは購入者の年齢や性別、購入履歴に基づいて、厳選したお薦めの商品を販売する「提案型」の通販サイトだ。「アマゾン」や「楽天市場」に代表される検索型の通販サイトは、そもそも欲しいものがある人しか訪問しない。ルクサは違う。情報過多の時代に「何かいいものはないか」と探している消費者に対し、「ルクサにいけばライフスタイルに合う商品が見つかる」というサイトづくりをしている。
13年に地域特集の第一弾として、日本酒など徳島県産の上質な商品を販売した。地方の企業はいい物を作っても知名度がないから売れない。我々が掲載商品の質を担保し、「ルクサだから安心」という世界観を広げることで、徳島にも貢献できたらと思う。マスマーケティングで億単位の広告を出さないと物が売れないという世界観を壊したい。

せお・もえぎ 
1985年、吉野川市生まれ。阿波高、京都大卒。外資系金融大手ゴールドマン・サックスを経て通販サイト運営ルクサ(東京)の立ち上げに参加。2015年より現職。

トークセッションに続く・・

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