人の力が 最大の資源-とくしま創生アワード キックオフセミナー

とくしま創生アワード

人の力が 最大の資源

徳島を元気にする事業プランを発掘、支援する「とくしま創生アワード」(同実行委主催)のキックオフセミナーが平成28年6月12日、徳島大学常三島キャンパスであった。

「地域に根差した仕事をつくる」をテーマに、一般社団法人つむぎや(東京)代表の友廣裕一さんが講演。スギ材の器作りを通して森林保全を考える「神山しずくプロジェクト」の廣瀬圭治(きよはる)さんとのトークセッションでは「最大の資源は人のエネルギー」「お金やプランよりも事業に懸ける思いがあれば協力者は集まる」などの意見が交わされた。

セッションの進行役は徳島大学COC+(プラス)推進本部特別准教授の川崎克寛さんが務めた。(文=湯浅翔子、門田誠、写真=家段良匡)

講演「地域に根差した仕事をつくる」

まずは現場で行動を
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ともひろ・ゆういち  大阪府出身。早稲田大卒業後、全国70以上の農山漁村を訪ねて地方の現状を知る。東日本大震災後、宮城県石巻市の牡鹿半島で漁村の女性が働ける食堂やアクセサリーブランドの立ち上げに奔走。31歳。

学生時代に起業したいと思い、仲間とビジネスプランを考えてはブラッシュアップするみたいなことをずっとやっていた。そのスタイルが自分には合っていなくて、結果的に一歩も踏み出せないまま時間が過ぎていった。

ビジネスプランづくりから入ってうまくいく人もいると思うが、そうではなくて、まずは現場で行動しながらプランをつくっていくスタイルが合っている人もいる。後者の方の参考になればと思う。

東日本大震災が起き、2011年3月17日に東北に入った。避難所を回るうちに宮城県牡鹿半島にたどり着いた。男の人はがれきの撤去など、緊急雇用で忙しくしていたが、女の人はあまりやることがなかった。4月末、お母さんたちが集まり、じっとしているといろいろ嫌なことを考えてしまう。手仕事など、できることはないかと相談された。
するなら、この人たちがやる必然性のあることをやった方がいいと思った。漁網を補修するカラフルな糸でミサンガを作ることにした。売ると2日で約700本売れた。それが大きな一歩となった。いきなり700本売れて、初めて自分たちの通帳に約40万円が入った。テンションが上がり、次は何をやろうかという話になった。

何もなかったエリアに小屋を建て、弁当屋をオープンさせた。1日100食以上をコンスタントに売っている。月の売り上げから経費を引き、それぞれ入った日数で割って、1人当たりの給料を出す。最初は払えなかったけれど、絶対に赤字にならず、つぶれない仕組みだった。

「OCICA(オシカ)」という名のアクセサリーブランドも立ち上げた。牡鹿半島のシカの角と漁網の補修糸を使っている。糸ノコと糸など、初期投資は10万円に満たないくらい。でも1年で数百万円、2年で1000万円を超す事業になった。小さいけれど、コンスタントに1人当たり月3万円くらいの仕事が生まれている。

地域にいると、国の補助金があればできるのになどと思ってしまうが、そうでなくても何かできる可能性はある。こんなやり方でもビジネスプランはできるというヒントにしてもらえればと思う。

トークセッション

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ひろせ・きよはる  岐阜県出身。デザイン事務所キネトスコープ代表。手掛けた仕事に、全国のクリエーターが参加するデザイン展「わたしのマチオモイ帖」のプロデュースなど。43歳。

思いあれば人集まる 廣瀬
自分の心と向き合う 友廣

廣瀬 まずは「神山しずくプロジェクト」の紹介をすると、神山町のスギを使ったタンブラーなどの商品を開発している。4年前に町に移住し、豊かだと思っていた山が実は人工林で、水源を危ぶむ状況になっていることに気づいた。2人の息子たちにとって古里になるであろう町を守るためにデザイナーとしてできることを|と考え、問題提起のツールとして「しずく」をスタートさせた。

川崎 廣瀬さんは新しい働き方に挑んでいるように見える。

廣瀬 今年は大阪の事務所を閉めてスタッフにも神山に移住してもらう。これまではデザイン、ウェブ制作という一つの業種でサラリーをもらうスタイルだったが、これからは田んぼも、木の器も、ウェブも、と1人6業も7業も持って、それを回しつつ食べていくというスタイルを本気で目指そうと思っている。

川崎 地方の魅力は。

友廣 富山の限界集落で出会った移住者が「東京こそ限界集落」と話してくれた。固定費は高く、お金がないとろくなものが食べられない。何より「障害者福祉の仕事に携わる自分ですら電車で足を踏まれていらっとしてしまう、そういう環境に限界を感じる」と。確かに社会構造的な限界はある気がする。

川崎 人が生きていく場所ではなくなっているのかもしれない。

廣瀬 徳島は豊か。東京は人が多くて、消費社会だけど資源という意味では何もない。東京の高級店で2万円も3万円もするような食材を、徳島では皆テレビを見ながら食べている。だからこそ東京の二番煎じではなく、徳島の人に主導権を取ってほしいと思う。

川崎 地域にあるものを資源として使うときのヒントを。

友廣 地域の最大の資源は人のエネルギー。OCICAにしても、シカの角をただで仕入れて原価が安くできるからといってビジネスとしてうまくいくかといわれたら、そんなに単純な世界ではない。人の心に刺さる、人に力を貸してもらえるというのは最終的に、やる人のエネルギーだと思った。ビジネスプランありきで本当にやりたいことが抜け落ちると、人の心が寄ってこない。ビジネスとしての採算性を考えながらも、一方では自分の心と向き合わないといけない。

川崎 税金である補助金の功罪をどう考えるか。

廣瀬 神山しずくプロジェクト開始時に初めて、自身の事業に助成金を使った。魔法のようなお金に翻弄(ほんろう)される人がいる理由も分かったし、補助金が切れたときに「お金がない」という現実にも直面した。自立経営を目指しているので、今は人を雇うための補助金は使っていない。もちろん工場建設や増員など、本当に必要だけど原資がないから挑戦できないというようなときには“健やか”に使えばよいと思う。生き金にするのは使う人の思いとセンスだ。

友廣 身の丈を超えるような補助金もよくない。特に大きなお金が動いた被災地では、そのせいで崩れていく事業もたくさん見た。

川崎 起業は怖くなかったか。

廣瀬 何かを始める時に怖さがないはずはない。僕自身、できない理由を並べてしまう時もある。でも一歩踏み出して、景色ががらっと変わる経験をすると、「なんでこんなことでぐずぐずしてたんだろう」と思う。今は「やって後悔しよう」という発想。お金やプランは二の次で、思いがあれば、一歩踏み出したときに助けてくれる人はたくさんいる。

友廣 頭の中にアイデアがあっても、独りだとそれは妄想のままで、2人目が現れた瞬間に事業になることがある。「ちょっとやってみよう」と言った瞬間に動き出す。そうなると、筋のいい事業は勝手に自走していく。

ファシリテーター 川崎克寛 氏

徳島大学COCプラス推進本部 特別准教授・COCプラス推進コーディネーター
OLYMPUS DIGITAL CAMERA1970年生まれ、徳島県出身。渡米留学後、㈱ワールドを経て独立、E-planning代表。地域おこしプロジェクトや、インターンシップ事業などに参画。東日本大震災後、つなプロエリアマネージャーとして気仙沼地区を担当。気仙沼大島の約1,000世帯を対象に全島アセスメントを実施し、支援が及ばない人たちの生活を支えるネットワークをつくることに奔走。

アドバイザリーボード 渡邉さんメッセージ

未来は今とは絶対に違う
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とくしま創生アワードのキックオフセミナーでトークセッションする(右から)渡邉さん、川崎さん、友廣さん、廣瀬さん=徳島大

アワードの審査、助言に当たるアドバイザリーボードの渡邉徹さん=一般社団法人キキーキャート理事長=も”飛び入り“し、参加者にエールを送った。

サテライトオフィスプロジェクトを通して徳島県に関わり始めた5年前、徳島の風土にはベンチャー企業を押し上げる力があるのかと期待してやってきた。それは大塚製薬、日亜化学工業、ジャストシステムと、東京ではなく世界のマーケットに挑戦する本物の企業が生まれた土地だから。しかし今の徳島ではチャレンジしたい若者があまり目立たないというか、皆さん東京に出てしまっている。
東京や大阪で仕事をしていた人間からすると、徳島では多くの人が都会に対して幻想を抱いているように感じる。そんなにいいところではないし、現実を知ってしまえばなんてことはない。
僕たちがビジネスをするときに前提とするのは、未来は絶対に分からないということ。でも一つだけ確かなのは、未来は今とは絶対に違う。新しいことを興すという行為にも二律背反的なところがあって、不安が大きければ大きいほど、わくわくする量が多い。楽しみが大きければ大きいほど、つらいことも多い。この両方を自分の中に押し込めて戦える人が、チャレンジする人だ。
もちろん事業は1人ではできない。「とくしま創生アワード」では、自分が好きなプランを皆に知ってもらって、新たに集まってくれた仲間の数が本当の”賞金“だと思う。徳島ならではの人が集うアワードになってもらいたい。

実行委員会の構成メンバー

徳島新聞社、徳島県、徳島県信用保証協会、徳島経済研究所、徳島大学、徳島文理大学、四国大学

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