国内外の火山を撮影 写真家・宮武健仁さんにインタビュー

SF映画の一場面のような写真。鹿児島県の桜島で撮影されたものです。松茂町の写真家宮武健仁さんは、桜島をはじめ日本各地の火山を撮影し、写真集や科学絵本を発表してきました。なぜ火山を被写体に選んだのか、どうやって撮影しているのか、宮武さんにインタビューしました。

-噴き出す赤い石に稲妻が走る迫力のある写真です。

「『火山雷』です。水蒸気や火山灰が噴き出す時の摩擦による静電気で起きるとされ、写真に写るほど明るいものはなかなか見ることができません。火山雷の発生しているときは、ドーンという噴火の音に混じってゴロゴロと普通の雷のような音が聞こえてきます」

宮武健仁さん

-桜島の噴火の様子を詳しく教えてください。

「夜撮影していると、噴火の瞬間、真っ赤な火山弾が飛び出し、斜面に落ちるとオレンジ色になってはじけるように飛び散ります。その様子は線香花火に似ています。噴火の音は、数秒遅れて聞こえてきます。花火の三尺玉が上がった時のようにドーンと圧力を感じる音で、体に響きます。車が揺れるくらいの時もあります」

-なぜ火山を撮影しようと思いましたか?

「中学の修学旅行で熊本県の阿蘇山を訪れ、火口がほの赤くなった絵はがきを見て興味を持ちました。火を噴く火山を見ると、地球が単なる石ころではなく、生きている天体なのだと感じます。徳島県は火山に縁遠い場所ですが、地球の息吹を表現したい、子どもたちにも興味を持ってもらいたいと思ったのです」

桜島と錦江湾

-桜島はどんなところ?

「約5千人が暮らす桜島は、鹿児島市からフェリーで15分ほどで、過去の噴火により垂水市とは陸続きになっています。9千年前まで活動していた北岳と、その後から今まで活発に噴火している南岳があり、山の高さは約1100メートル。噴火は年間千回ほどで、世界一の頻度と言われています」

-撮影はどんな場所で?

「近年活発に噴火しているのは、南岳の東斜面8合目にある昭和火口。斜めに向いているので、中までよく見えます。火口から2キロは立ち入り禁止区域で、桜島の外周道路は火口から3~3・5キロのあたり。撮影は、山影と火口が美しく撮れる桜島東部の外周道路近くで行っていて、許可を得て個人の畑に入らせてもらうこともあります」

桜島の立体模型。写真中央に昭和火口があり、指し示しているところが撮影スポット

-どんな機材を使いますか?

「広い範囲を撮る(広角)、火口を大きく撮影する(望遠)、動画の三つの用途でそれぞれ2台ずつ、合計6台のデジタル一眼レフカメラを使っています。動画撮影には音も重要。他のカメラのシャッター音や道路を走る車の音に噴火の音がかき消されないように、洗面器の底をくりぬいてマイクを装着した自作の集音マイクも使います」

-撮影する時間帯は?

「噴火は昼も夜も起きるのですが、昼間は灰色の噴煙がモクモクと立ち上り、赤い火が美しく撮影できるのは暗くなってから。夜が明けるまで火口にレンズを向け続けます。桜島は日常的に噴火している火山ですが、それでもいつ噴くか分からないのが撮影の難しいところ。昼間活発でも夜はぱったりやんでしまって空振りだったり、数日静かで噴火しなかったりということもありました」

-撮影は危なくない?

「撮影中、指先ほどの大きさの軽石が飛んでくることがあります。『安全』を一番に考えて撮影しています。桜島を撮影しようと思い始めた2009年7月、長崎県・雲仙岳災害記念館に立ち寄り、火砕流に飲み込まれるまで撮影を続けたカメラマンが遺した映像を見ました。その映像が撮影された当時は火砕流の危険性があまり知られていなかったのです。噴火から自分の身に危険が迫るまでのわずかな時間に取れる安全策は何か、考えてから桜島の撮影に臨みました」

-具体的にどんなことに気をつけていますか。

「ヘルメットと防毒マスクは火山撮影の必需品。車はすぐに逃げられるように、大きな道のそばに回してから止めておきます。夜は噴火の様子をはっきり見ることができません。撮影中は普段と違う音はしないか耳を澄ませて、大きな音がした時はすぐに車に乗り込んで火口から離れるようにしています。一晩中、火口の様子に意識を集中させています」

-近年は桜島のほか、阿蘇山、青ヶ島(東京)など日本各地の火山や、青い火のインドネシア・イジェン火山も撮影。上空からの写真もありますね。

「自治体の許可をもらい、ドローンを使用しています。リュックサックにカメラ付きドローンを入れて山頂付近まで登り、カメラの映像を手元で確認しながら操縦装置を扱います。以前、ヘリから地上を撮影した経験があるのですが、操縦士と息を合わせてシャッターチャンスを狙うのが難しく、やり直すにも旋回してこなければならないので一苦労。ドローンなら撮りたいアングルに自分で操縦してシャッターが押せるし、火山ガスで立ち入りが制限されているところでも撮影できます。ただ、飛ばせる高さに限界があるので、ヘリや飛行機だからこそ撮れる写真もあります」

ドローンで撮影した青ヶ島

-日本の火山を写真で紹介する児童書「火山の国に生きる」(くもん出版)シリーズを2月に発表しました。「生きている火山」「火山とくらす」「日本の火山」の3作です。

「火山は、噴火や地震などの怖い面ばかりではありません。水はけのよい火山灰が多い裾野では作物がよく育つし、地熱を利用した調理や温泉などの恵みもあります。日本では古来、噴火や地震による災害に見舞われる一方で、火山がもたらす恵みとともに暮らしてきました。子どもたちに防災への意識を高めてもらうと同時に、火山の作る地形の面白さや地球を身近に感じ、興味を持ってもらう入口になればと思っています」

「火山の国に生きる」シリーズを手にする宮武さん

〈宮武健仁さん 略歴〉

1966年大阪府生まれ、徳島市育ち。1988年、東京工芸大学工学部写真工学科卒業。スタジオカメラマンを経て1995年独立。2009年から撮影を始めた桜島噴火の写真が、「ナショナルジオグラフィック」などに掲載。芸術性が高く、学術的にも価値のある写真を発表し続けている。

                             (2017年4月18日)

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