写楽歌麿とその時代 5 歌麿「松葉楼粧ひ実を通す風情」

美人画の大家・喜多川歌麿(?~1806年)が吉原の遊郭・松葉屋の遊女を題材に描いたのが、今回紹介する大首絵「松葉楼粧(まつばろうよそお)ひ 実(じつ)を通(とお)す風情(ふぜい)」だ。

微妙な心理 描き出す

喜多川歌麿「松葉楼粧ひ 実を通す風情」(錦絵大判雲母摺り、寛政11年ごろ、縦64・4センチ×横49・0センチ、中右コレクション)

歌麿は役者絵に用いられた大首絵の手法を、美人画に導入したフロンティアとして浮世絵史に名を残す。顔をクローズアップして表情を克明に描くことで、従来の全身図では表現しきれなかった女性の内面にまで迫る独自の画風を確立した。

「松葉楼―」でも、なじみ客に手紙を書いている遊女の穏やかな表情や目元の描写で、相手に情を尽くす女性の微妙な心理を表現した。

東洲斎写楽と同じ版元・蔦屋重三郎のバックアップにより、美人大首絵で成功を収めた歌麿。鉱石の一種・雲母(うんも)を刷り込むことでキラキラと光る効果を見せる「雲母摺(きらず)り」を発案するなど、自身の画風を深化させていった。

展覧会の監修を務める国際浮世絵学会の中右瑛(なかうえい)常任理事は「美人大首絵の開発と、背景に豪華な雲母摺りを初めて使用したことの2点が、歌麿を他の絵師とは違う特別な存在にした」と話している。

江戸時代中期の浮世絵黄金期の傑作145点を展示する「写楽・歌麿とその時代」(徳島市のあわぎんホールで22日まで開催中)。連載の後半では、歌麿らによる魅惑の美人画を紹介する。

(2017年8月9日)

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