コブシモドキ

数本が栽培されるのみ

  コブシモドキは、モクレンやコブシと同じ仲間で、徳島県内にしか見つかっていない大変珍しい植物だ。○○モドキという名前は、よく似てはいるが、それとは異なるものに付けられる。

 コブシモドキも、コブシに似た白い花を咲かせる落葉性の高さ三~五メートル木である。一九四八(昭和二十三)年、県人で植物学者の阿部近一、赤澤時之両氏によって、相生町の山中で一株だけ発見された。当時は株から出た枝が地面をはい、土に接した部分から根が出ていたことから、「ハイコブシ」の別名もつけられた。

 葉はコブシよりやや大きく、中央部からわずかに葉先寄りの部分が最も幅が広い。四月中旬に直径十二~十五センチの花を多数咲かせる。がくは三枚。六枚ある花びらは長さ約八センチ、幅約七センチで、基部が細い卵形。外側の中央脈に沿った部分は淡紫色を帯びる。雌しべ、雄しべともに多数ある。

 発見後しばらくして、原木確認のために詳細な現地調査が数度行われたが、見つからなかった。それ以後、どこからも自生しているとの報告はない。阿部氏が原木から得た株を元に挿し木などで増やされ、現在は数本が相生町などで栽培されている。

 栽培は比較的容易で、幹は直立して大きく成長する。花は咲いても種子はできない。環境省のレッドデータブックでは野生絶滅、徳島県のレッドデータブックでは絶滅とされている。

 周辺ではコブシですら自生していないのに、コブシモドキがなぜ一本だけ生育していたのか、興味深いなぞである。(徳島県植物研究会会長・木下覚)

(2003年4月21日付)