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阿南市などを舞台にした反原発映画の製作・脚本を手掛けた矢間秀次郎(やざまひでじろう)さん   2013/12/31 09:53
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阿南市などを舞台にした反原発映画の製作・脚本を手掛けた矢間秀次郎(やざまひでじろう)さん 東京電力福島第1原発事故が起きてから程なく、放射能の不安におびえる人たちから聞いた。「安全神話などなかった」。環境ジャーナリストとして探らなくてはならないのは事故に導いた本当の要因。反原発の世論も形成しようと、過去に立地反対運動を成功させた全国の町を歩き、心の声をカメラに収めている。

 完成させたばかりのドキュメンタリー映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」の舞台に選んだのは、紀伊水道を挟む阿南市蒲生田地区と和歌山県日高町。30年以上も前に原発の危機を察知し、原発マネーによる恩恵を断ってまでも誇りある郷土や仕事、家族を守ろうと協力した住民の心意気を感じ取った。「使命感に燃え、苦難を乗り越えたからこそ今の幸せがある。本当の豊かさとは何か。スクリーンを通して多くの人に考えてほしい」

 大阪府で生まれ、太平洋戦争中に小松島市に疎開。5歳のときから小松島高校2年までの12年間を過ごした。家は貧乏のどん底にあったものの「豊かな海や人々のぬくもりが心を支えてくれた」。潜り方を教わった漁師、勉強そっちのけで友達と競い合ったサザエ・アワビ漁、先輩に何度も放り込まれた小松島港・・・。当時使っていたもりや、貝を開けるための工具など、思い出の詰まった品々は今でも大切に取ってある。

 多感な少年期に触れた徳島の風物や文化が環境意識の支柱だ。今回、徳島の映画製作に行き着いたのは偶然にすぎないが「『蒲生田の戦い』を歴史に埋没させないことが、自分を育ててくれたかけがえのない古里への恩返しになるはず」。映像を通して克明に追究できたと喜ぶ。

 東京都庁などで働く傍ら、川の再生やダムの保全活動に42年間取り組んできた。現在は環境雑誌の編集長を務める。「全国には原発をめぐってうずもれた課題が山ほどある。真実を求め、映像に残していきたい」。73歳。生涯現役で全国の現場を歩き続ける決意は揺るぎない。

 東京都小金井市で妻と長女の3人暮らし。