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小説「親鸞」全編を点訳した寒川孝久(かんがわたかひさ)さん   2014/9/1 09:46
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小説「親鸞」全編を点訳した寒川孝久(かんがわたかひさ)さん 60代からの多くの時間を点訳にささげてきた。教師を退職し板野町社会福祉協議会に勤めていた時に「ボランティアを人に奨励するだけでなく、自ら行動しなければ」と一念発起した。点字を初歩から学び20年以上、主に子ども向けの絵本や寓話(ぐうわ)などの点訳を続けてきた。
 
 2008年に徳島新聞で五木寛之さんの小説「親鸞」の連載が始まった時「五木さん渾身(こんしん)の作品。子ども向けではないが点訳しよう」と思い立った。6年かけてこつこつ点訳し、連載終了と同時に全編を完成させた。
 
 自らの点字本の大きな特徴が挿絵。「親鸞」にも取り入れた。絵本などの点字本にも全て挿絵が添えられている。
 
 これには理由がある。1992年に初めて点訳したイソップ寓話「ライオンとねずみ」を県立盲学校(現徳島視覚支援学校)に届けた時のこと。男児が「僕、ライオンってどんな形か知らん」と寂しそうにつぶやいた。自作の点字本の決定的な欠陥を知りショックを受けた。「子どもの本には特に挿絵が必要だ」。苦い経験が挿絵を描くきっかけとなった。
 
 すぐにパソコンに詳しい知人に点図ソフトの開発を依頼。以後、ソフトを駆使してあらゆる本に挿絵を描いてきた。
 
 94年にはボランティア団体「点字絵本の会」を設立。全国の仲間と点訳した本は2千冊を超える。後進もたくさん育った。「そろそろ引退かな」と照れ笑いするが、気が付けば新しい本の点訳を始めている。点字本を必要とする人がいる限り、挑戦は終わりそうにない。
 
 北島町江尻の自宅で妻の清子さん(87)と2人暮らし。89歳。