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徳島県医師会の健康相談
食道裂孔ヘルニア   2016/1/30 11:47
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食道裂孔ヘルニア 食事が喉を下りていかない

 【質問】80代半ばの主婦です。3年前、胃カメラ検査で「食道噴門裂孔(ふんもんれっこう)ヘルニア」と診断されました。その病気になってから食事が喉を下りていかず、胸が苦しいです。ゲップをすると少し楽になります。原因かどうか分かりませんが、脊柱管狭窄(きょうさく)症を患って30年余りコルセットを着けています。腰も曲がり、シルバーカーを使って歩いている状態です。日常生活でできる処置や注意すべきこと、ゲップを出やすくする方法などを教えてください。

 きくち医院(阿南市新野町南宮ノ久保)
 菊池健院長

 胃液の逆流に注意を

 【答え】人体には、胸と腹の境に横隔膜という薄い筋肉があります。食道は、横隔膜にある裂孔という隙間を通って胃につながっています。この隙間から胃の一部が横隔膜より上(食道側)へ押し出された状態が「食道裂孔ヘルニア」<図参照>です。噴門(胃の入り口)とともに胃の一部が押し出される滑脱(かつだつ)型と、噴門は定位置にあって胃の一部が出てしまう傍食道(ぼうしょくどう)型の二つのタイプがあります。

 横隔膜の隙間は狭いので、食道裂孔ヘルニアになると食道や胃が締め付けられ、食べ物がつかえてしまうこともあります。また、噴門が緩んだままで胃液が食道へ逆流しやすくなる結果、胃酸で食道の粘膜がただれて炎症を起こします。これを繰り返すうちに傷ができて引きつれを生じ、食道が狭くなると、食べ物がつかえるなど同様の症状が現れます。

 他にも、がんなどの腫瘍による食道と胃の境目の狭窄(狭くなること)や、運動機能異常(アカラシアという病気)、ストレスや不安による食道けいれんといった病気でも、食べ物のつかえは起こります。

 ただし、内視鏡検査(胃カメラ)で診断された当初から症状が変わらないのであれば、ヘルニアによる締め付けを一番に考えて差し支えないでしょう。ゲップが出るときに食道が開いて食べ物が胃に落ちるという点も、理屈に合っています。

 ゲップを出しやすくする方法は、インターネット上にはいろいろと書かれていますが、決定的なものはないようです。授乳後に赤ちゃんの背中を軽くたたけば空気が胃の上の方に集まって出やすくなるという例を応用し、背筋を伸ばして腹をさするぐらいしかないでしょう。

 食道裂孔ヘルニアの合併症として最も多いのが、噴門部から胃液が食道へ流れ込む「胃食道逆流症」です。軽いものでは胸やけを訴えたり、反射的に咳(せき)が出やすくなったりするくらいです。しかし、胃液の酸が強いと食道炎を起こし、繰り返せば狭窄に至ることは先に書いた通りです。

 さらに、胃液が喉まで逆流して気道に入れば肺炎を起こすことがあります。寝たきりの高齢者にみられる嚥下(えんげ)性肺炎と同じもので治療が難しく、肺炎球菌ワクチンでは予防できません。

 そこで、胃食道逆流症の予防が必要になるわけですが、薬物治療としては胃酸分泌を抑える薬を飲む、噴門を緩める副作用のある薬をやめるといった方法が行われます。ただし、これだけでは不十分で、日頃の生活で気を付けるべき大切なことがいくつかあります。

 腹部が押さえつけられると胃の中身が逆流しやすくなるため、満腹になるまで食べるのを避け、食後は背筋を伸ばして座っておくか、軽く散歩するのもいいでしょう。横になると逆流が起こりやすくなるので注意が必要です。

 また、脊柱管狭窄症のコルセットと同じか分かりませんが、骨盤を固定するベルトを腹部に巻いて締め付けている人をよく見掛けます。誤った位置に着けると胃液の逆流のもとになるので、ベルトが正しく骨盤の位置に巻かれているかどうか、いま一度使い方を確かめてみてください。