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杉原實さん(日本リモナイト会長)   2017/9/5 11:12
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杉原實さん(日本リモナイト会長) 熊本県阿蘇市の阿蘇カルデラには鉄分を多く含んだ褐鉄鉱(リモナイト)が分布している。地中のリモナイトを採掘し、環境や畜産分野への応用製品を製造販売する企業を興して51年。「戦争がなければずっと徳島で仕事をしていたかもしれません」

 渭城中学校(現城北高校)に入り3カ月が過ぎた1945年7月4日未明、徳島大空襲に遭った。父は徳島工業専門学校(現徳島大)の教授で、徳島市中常三島町の官舎で寝ていたところ突然空襲警報が鳴り、同時に爆音が響いた。家の外に出ると眉山辺りの空は赤く染まり、焼夷(しょうい)弾が幾筋もの赤い糸を引いて落ちるのが見えた。

 焼夷弾は学校周辺にも降り、「吉野川へ逃げろ」との周りの声に従い北へ走った。川に漬かって難を逃れたが、一夜明けた町は変わり果てていた。住む家を失い、父の出身地の阿蘇へ移り終戦を迎えた。「水の冷たさ、焼けた家や学校、多くの犠牲者など、今もはっきりと覚えている」

 大学卒業後に入った製鉄会社は輸入鉄鉱石に押され3年で倒産。残務処理をしている時、リモナイトの定期的な注文が入ったため新しい会社を設け社長に就いた。

 リモナイトは当初、絵の具や焼き物の釉薬(ゆうやく)に使われた。研究で硫化ガスを吸着する脱硫効果や脱臭効果がある上、ミネラルが豊富に含まれていると分かり、汚水処理施設での脱硫剤や土壌改良剤、畜産飼料添加剤など用途は広がっている。65歳で会長になり、大学との連携や企業との共同開発に力を注ぐ。「リモナイトの新たな用途を作るのが私の役目ですね」

 現在、徳島県内に事業所がある企業との間で共同開発を進めているという。「再び徳島と関わる仕事ができることをうれしく思う。人生は面白いですね」と笑顔を浮かべた。

 すぎはら・みのる 徳島市出身、熊本商科大(現熊本学園大)卒。1966年、日本リモナイト鉱業を設立し、95年から会長。阿蘇地域を対象とした研究や振興に取り組むため2018年4月に発足する「阿蘇学会」の設立準備委員会委員などを務める。熊本市在住、86歳。