上板町瀬部の乳保(にゅうほ)神社境内にあるイチョウの巨樹。幹回り約十七メートル、高さは約二十八メートルあり、推定樹齢八百-千年で県内でも最長老のイチョウとされている。一九四四(昭和十九)年に国の天然記念物に指定された。
幹や枝から、大小さまざまのこぶのような突起が垂れ下がっている。イチョウに時折見られる、空気中に露出した「気根」と言う根の一種。その形を乳房に見立てて「乳イチョウ」とも呼ばれ、地元では古くから授乳の神木として祭られてきた。神社名の由来にもなっている。
氏子総代の松家修さん(71)によると「こぶに紙を結び付ければ母乳が出るようになる」との言い伝えから、昭和三十年代までは紙を結びに来る女性も多かったという。現在では訪れる人も少なくなり、結んだ紙は見られない。
これまでに何度も落雷や台風の被害を受けてきた。最近では、二〇〇四年に台風時の強風で幹の一部が折れたが、地域住民らの手入れもあって樹勢は回復。今も地域のシンボルとして、しっかりと根を下ろしている。【写真説明】イチョウの枝から垂れ下がった気根=上板町瀬部の乳保神社