阿南市富岡町滝の下の正福寺境内正面にある「石造五重塔」は、一般的な木造建築の五重塔を模した形状で、高さは約四・九メートル。各層のかさに「繁垂木(しげたるき)」と呼ばれる特殊な構造があり、二〇〇五年に市の有形文化財に指定された。
かさは裏側に、ひさしを支える垂木のような分厚い部分が四センチ間隔で八-十本ある。垂木の幅はいずれも約五センチ。鎌倉中期の遺構で国指定文化財の明泉寺(石川県穴水市)の石造五重塔にも同様の構造があり、ほかに例がないことから希少性が高いとされた。
各層の前面は四角形にくりぬかれ、内部が見える。第一層内に、石造りの大日如来座像(高さ約四十センチ)が安置されているのも明泉寺と同じだ。
制作者ははっきりしない。篠原寛海住職によると同寺は中世、学問所で、その出身者から寄贈を受けたと伝わっている。第一層側面に「逆さ卍」の文様や「文殊院」の名が刻まれ、「逆さ卍」が寺紋の八坂寺(愛媛県大洲市)と関係があるのではないかという指摘もある。
風化でひび割れなどの傷みが激しい。一九四六(昭和二十一)年の南海地震で倒れ、塔頂部をコンクリートで補修した。文化財指定後は見学者も多いという。【写真説明】各層のかさに特殊な構造がある正福寺の「石造五重塔」=阿南市富岡町滝の下