美馬市脇町の中心部を南北に流れる大谷川。吉野川との合流点を北へ約一キロさかのぼると、普段は伏流水が地下を流れるだけの水無し川に、石積みの砂防ダムが横たわっている。
二〇〇二年に国の登録有形文化財となった大谷川堰堤(えんてい)は高さ三・八メートル、幅九十七メートル。上から見ると、堤は水を真ん中に集めるように弓状で、水勢をそぐため三段になっている。一八八六(明治十九)-八七年の建設で、四国で唯一残る明治期の砂防ダムとしても知られる。
建設を指導したのは、オランダ人技師ヨハネス・デ・レーケ(一八四二-一九一三年)。一八八四年、治水対策のため日本政府に招かれて全国の河川を視察した。
吉野川流域を調査したデ・レーケは、砂岩層の阿讃山脈から豪雨のたびに流れる土砂を防ごうと、大谷川をはじめ吉野川北岸の河川数カ所で、砂防ダム建設を指導したが、県内で現存するのはここだけ。「デ・レーケ堰堤」とも呼ばれるゆえんだ。
大雨の翌日は水が流れているが、普段は枯れ川。中央の石は、表面が削られて、平らになっている。長年、濁流を防いできた歴史を感じさせる。【写真説明】オランダ人技師デ・レーケが建設を指導した大谷川堰堤=美馬市脇町北庄