神山町の人形座・上村都大夫座(通称寄井座)が所有する木偶の頭のうち、十四個が県有形民俗文化財に指定されている。頭は明治後期から昭和初期にかけての作品で、ほとんどを人形師・初代天狗久が制作した。
十四個の中で、「太公望(たいこうぼう)」は他の頭と比べて一回り大きく作られている。昔は舞台照明がろうそくだったため、観客席から見えやすいようにとの狙いから。また、山尾納(おさめ)座長(68)によると、記録が残っている最も古い頭は一九〇〇(明治三十三)年の作品。
年代物の頭は修復ができない場合があり、特に顔のひび割れには注意している。目や口を動かすからくり用のひもは取り換えられるが、顔は塗り直しても同じツヤが出せないという。普段は毛布にくるんで木箱に入れ、座元の同町神領、河口榮祐(えいすけ)さん(77)方の蔵に保管している。
語り手の減少などから、上演されなくなった演題の頭は、公演時に会場で展示している。山尾座長は「人形遣いの技術だけでなく、頭や衣装などの貴重な舞台道具を後世に残し、伝えることも人形座の役目」と話している。【写真説明】県有形民俗文化財に指定されている木偶頭=神山町神領の河口さん方