美馬市脇町北庄の最明寺にある木造毘沙門天立像。静かな怒りの表情を浮かべ、豪族や武将が領地の鎮護を願う守り神として地域の歴史を見つめてきた。
ヒノキの一木造りの立像は像の高さ一五一・六センチ。唐式のよろいをまとい腰をひねって衣をたくし上げた動きのある造形で、腹部中心に施された文様の獅噛(しがみ)が目を引く。制作年や作者は不明だが平安末期の中央の作とみられている。一九一一(明治四十四)年に国の重要文化財に指定された。
地天女に支えられ、毘(び)藍婆(らんば)、尼藍婆(にらんば)の二鬼を従える兜跋(とばつ)毘沙門天の姿をとっている。左手に持つ宝塔、右手の戟(げき)などとともに後年足されたものと考えられ、当初からこの姿であったかどうかは不明という。
彩色はほぼはがれ落ちているものの、すすが付いており、武将らがこの像の前で戦勝祈願の護摩祈祷(きとう)を行っていたことをうかがわせる。また、数年前までは境内で毘沙門天にちなみ、重いもちを運ぶ力持ち大会も開催されていた。今もなお地域住民に深く愛されている。【写真説明】静かな怒りの表情を浮かべる木造毘沙門天立像=美馬市脇町北庄の最明寺