阿南市羽ノ浦町古毛の堤防道路から那賀川をのぞくと、周囲よりも際だって大きな岩が見える。名前は見た目の通り「大岩」。1964年に羽ノ浦町文化財に指定された。
那賀川に大規模な堤防がつくられた江戸時代後期、洪水をしずめるために投げ入れられた。大きさは長さ9メートル、高さ7メートル、周囲23メートル。投入地点北側の覗石(のぞきいし)山から切り出された。
那賀川下流は1865(慶応元)年、66年と相次いで大洪水が発生。現在の那賀川北岸用水取り入れ口から下流400メートルにわたって築かれていた万代堤も決壊した。67年に修繕した際、堤防へ水流が直撃するのを避けようと、大岩を置き、水の流れを変えた。
大岩は現在、コケが表面に生い茂る。案内看板が無ければ人工的に置かれた岩とは思えないほど、周囲の景色に溶け込んでいる。
度重なる洪水で人々を苦しめてきた那賀川。上流にダムができ、川幅も広がったため、下流域のはんらんは少なくなった。大岩は洪水対策の主役ではなくなったが、今も人知れず、洪水時の激流から堤防を守っている。【写真説明】洪水から堤防を守ってきた大岩=阿南市羽ノ浦町古毛