阿波市阿波町の吉野川に架かる岩津橋の北側は、江戸時代には川港として栄えた交通の要所。当時の繁栄をしのばせるように並ぶ旅館や料理店の近くに、県内最大級の大燈篭(とうろう)がある。
約2メートルの台座の上に花こう岩を加工した高さ4・3メートルの燈篭がそびえる。1867年に近くの杉尾神社の御神塔として建造されたらしいが、通常は2基あるはずの燈篭は1基だけ。「当初から灯台用に建造されたのでは」と、渡し場研究家の坂東直道さん(75)=同市市場町大俣=は推測する。
岩津橋周辺では、吉野川の川幅が200メートルほどと狭くなっている。さらに、両岸を結ぶ渡し船や炭や海産物を積んだ川船が行き交ったため、水難事故も多かった。夕暮れや夜間、水夫は燈篭の火を頼りに港を目指し、無事にたどり着くと料理店などで一日の疲れを癒やしたに違いない。
かつて、阿波、吉野川両市内だけでも渡し場は10カ所ほどあり、燈篭も各所に建造された。しかし、大半は堤防を築く際の基礎石として解体され、現在は数基しか残っていない。【写真説明】吉野川を往来する川船の灯台として活躍した杉尾神社の燈篭=阿波市阿波町岩津