穴吹川の上流に向かって国道492号を進み、「三木家住宅」の標識を目印に坂道を上ること約3キロ。シダレザクラの並木を過ぎると、かやぶき屋根、寄せ棟づくりの堂々とした風格の住宅に出迎えられる。
江戸初期(1650年ごろ)に建てられた徳島県内で最古の民家。中世の山岳武士の系譜を引く武家屋敷として価値が高く、1976年に国の重要文化財に指定されている。
建物は南に面し、間口が22・2メートル、奥行き9・3メートル。壁が少なく大黒柱もないが、一間ごとに立つ17センチ角の柱が家屋を支える。平面で見ると、南北で2列、東西は5列の10室に分かれ、西端の2室を除いて床上となっている整形8間取り構造が特徴という。中には当主しか入れない部屋も。
三木家は阿波忌部氏の直系で、代々、天皇即位の儀式・大嘗(だいじょう)祭で使う麻の織物「麁服(あらたえ)」を献上してきた。鎌倉時代から数えて28代目の当主となる三木信夫さん(73)は「800年前の文書も残っていますよ」と事もなげに話す。太古から続く阿波の歴史が今も山あいの集落に脈々と息づいている。【写真説明】県内最古の民家・三木家住宅。朝廷とのつながりが深い=美馬市木屋平貢