阿南市那賀川町敷地の萬願寺に、子安地蔵として知られる地蔵菩薩坐像(ぼさつざぞう)が、秘仏として祭られている。平安時代後期に作られたとされるが、作者は不明。1992年に県の指定文化財として認定を受けた。
全長は148・4センチあり、県内の地蔵としては大きい。坐像の高さは88・4センチ、ハスの花をかたどった蓮台(れんだい)の高さは60センチある。現在は漆がはがれて木目が見えるものの、往年は全体が漆で覆われ、黒い光沢があったと考えられている。額の中央には水晶でできた仏眼が輝く。袈裟(けさ)の上に首飾りをし、右手には錫杖(しゃくじょう)、左手には金箔(きんぱく)が施された如意宝珠を持っている。
腹部に結ばれている腹帯は、妊婦が安産などを願い、妊娠5カ月の戌(いぬ)の日から腹に巻く岩田帯と考えられており、子安地蔵の由縁となった。腹帯をした地蔵は全国的にも珍しく、寺には安産祈願や名付けのために参拝する人もいる。
同寺には古い言い伝えがある。聖徳太子が47歳のころ、難産に苦しむ女性が多数いたので、女性が安心して子を産めるようにと地蔵菩薩坐像を作り、難波(なにわ)の海から流した。それが、同寺にたどり着いたといわれている。今も安産を願い本堂の奥でひっそりと世相を見守っている。【写真説明】安産を願い本堂の奥でひっそりと世相を見守る地蔵菩薩坐像=阿南市那賀川町敷地の萬願寺