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人口が流出し、地域社会崩壊の危機に直面する全国の中山間地や農村地域が「食」と「農」を力にして、活路を見いだそうとしている。そして産直市が、その拠点として存在価値を高めている。
産直では、「ふぞろい」などを理由に以前なら出荷されていなかった野菜を、自分で値段を付けて販売できる。少量でも可能なため、家庭菜園を楽しんでいる地域の高齢者も出荷できる。
美馬市の産直では、年間収入が100万円を超える生産者もいる。「口座を見る楽しみが増えた」と多くの出荷者が喜ぶ。消費者にとっても、量販店より安くて新鮮な野菜が手に入る。双方にメリットがある。
産直は、量販店が無視できない存在になってきた。県内スーパー大手のキョーエイは、2007年から地域の生産者の協力を得て、店舗内に産直コーナー「すきとく市」を開設してきた。すでに県内28店舗のうち25店で開設されている。
産直にスペースを割けば、その分、量販店で扱う野菜の売り上げは落ちる。それでも産直コーナーを設けるメリットについて、キョーエイの担当者は「市場を通して店舗に並ぶのは収穫から1~2日後だが、産直は数時間で届く。鮮度を求める消費者ニーズに応えられ、集客に大きな力を発揮する。相乗効果で店にとってプラスになっている」と話す。
美馬市で産直を取材するうち、出荷者の表情が輝いていることに気づいた。産直によって地産地消が進み、中山間地に収入をもたらすだけではなく、消費者が買ってくれる喜びを実感できるからだった。魅力ある農業の姿がそこにあった。収入が増える工夫をすれば、深刻な後継者不足にも光が差す可能性があるのでは、と期待を抱かせる。
産直で収入を増やすには、集客力を高めるのが早道だろう。規模の拡大、品ぞろえの充実、地域の食文化を伝える加工品の提供、栽培技術の向上、地元農産物を食材にしたレストランの併設など、工夫の余地は多い。
全国にはこれらを実践し、消費者から大きな支持を得ている産直市がいくつも存在する。大都市近郊では、開設から2年で年間販売高が20億円を超す実績も上がっている。店舗の大型化は全国の主流となりつつある。取扱量が増えることで、学校給食への納入も可能となるなど、商機は広がる。地方でも産直での年間収入が500万円を超す生産者が増えている。
生産者やJAが知恵を絞るだけではなく、行政も産直の成長が農業や中山間地を活気づけ、ひいては地域を守るとの考えに立ち、もっと側面支援を強化する必要がある。
福井県は本年度、中山間地で出荷されないまま眠る農産物を産直市が集荷できるよう、人の配置や車両の購入経費を支援する制度を創設した。農産物のブランド化の一助となる伝統野菜の認定に取り組む都道府県もある。また、貸し農園などを周辺に整備し、収穫した野菜の産直への試験出荷を可能とするなど、新規就農・定住を促す事業を始めた地域もある。
高速道路の料金引き下げが進むと、産直間の競争は激しさを増す。多くの中山間地を抱える徳島県も、他地域に先駆けて魅力ある産直づくりを支援する施策を展開すべきではないか。
京阪神への食料供給基地として位置付けられる徳島の生鮮食料品は、味、品質ともに評価が高い。四国の玄関口・鳴門インターチェンジ周辺に徳島の1次産品を集結させた大型産直を開設すれば、大きな誘客効果が期待できる。地域の食文化も発信すれば、さらににぎわい、1次産業の活性化に貢献するだろう。徳島でも、美馬でも、阿南でも、どの地域にも可能性はある。
農業従事者は高齢化が進み、10年後、20年後には激減する恐れがある。農業を通じた徳島再生は、待ったなしの課題である。(編集委員・門田誠、谷野圭助)=おわり【写真説明】開設から10年を経過した「夏子いなか市」に集う生産者たち=美馬市脇町西俣名