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詳報
「1票の格差」福岡高裁判決要旨 2010/3/12 20:49
【憲法の理念】 憲法は、投票価値について「誰もが過不足なく1票を有する」を理念としており、平等を完全な形で実現することは不可能であるにしても、理念の無視は到底許されない。国会もこの点の裁量の範囲はおのずから限定される。一方、憲法は都道府県という行政区画を考慮した選挙区画定を許容していると認められるが、その結果が平等の理念を無視するものになるならば、その段階で見直すべきなのは当然だ。 【本件選挙の検討】 試みに人口比例原則を採用し、2008年9月現在の各都道府県の有権者数を基に、議員総定数300を割り当ててみると、都道府県別の最大格差は鳥取県の1・636で、ほかはすべて1・5未満。人口比例だけに基づく配分であれば、「誰もが過不足なく1票を有する」との理念を無視するまでに至らず、憲法も許容したといえる。 投票価値の平等は、憲法が求める最も重要な理念であり、民主主義の要。本来の人口比例原則から逸脱する方式は、導入の必要性も合理性もない。1人別枠方式は、制定当時、既に違憲、違法だったと断ずるほかない。 衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条1項は、各選挙区の人口の最多を最少で割った数が2以上にならないよう規定し、配慮しているが、規定の趣旨や書きぶりからみて、できる限り1対1に近づけることを目標としておらず、「誰もが過不足なく1票を有する」との理念を目指していない点で、合憲的に解釈することは困難だ。 本件選挙での議員1人当たりの人口数の格差は、05年10月実施の国勢調査で高知3区と原告が所属する福岡2区との間で2・096。2倍を超える選挙区は48あり、憲法が求める投票価値の平等理念を大きく逸脱する。人口比例原則による配分の最大格差である約1・6とも大きな差があり、容認できないことは明らかだ。 【合理的期間論】 違憲判断には、国会による現実的、合理的な是正期間があったか否かを踏まえる必要があるとの「合理的期間論」がある。合憲に改める作業に着手した後、一定の猶予期間を想定し、なお放置した場合に違憲と判断すべきというものだ。最高裁判決が1人別枠方式を合憲と評価していることを視野に入れれば本件でも検討が必要となる。 しかし、1人別枠方式は制定当初から、憲法が求める投票価値の平等に明らかに反する上、区割りは議員の存立基盤であり、ほかからの問題提起や司法による救済判断に安住することなく、自ら率先して見直しを図るべきなのに、その努力をしない点が問題。区割りに関して合理的期間論を採用すること自体疑問だ。 最大格差が2倍以上である状態を前回選挙から4年近く放置し、選挙当日の最大格差は2・304まで達し、2倍を超える選挙区は45に上った。仮に、区割り規定が、制定当時に合憲だったとしても、その後、人口の変動などにより、違法性を帯びるようになったというべきだ。是正する姿勢をまったく見せないままに放置した国会の不作為は、裁量の範囲を逸脱している。合理的期間論を採用しても選挙は違憲というべきだ。 【結論】 請求は、福岡2区の選挙が違法という点で理由があるが、無効とした場合の公益の著しい障害などを考慮すると、請求を棄却し、選挙の違法を宣言するのにとどめるのが相当だ。
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