那賀町の野外音楽フェスティバル「エキサイティングサマー・イン・ワジキ」は今年で29回を数え、もはや徳島の夏に欠かせない。回を重ねて、語り草の年がいくつか生まれている。第6回の1995年は、その一つ

 出演は5組。とりわけ、ザ・イエローモンキーとシャ乱Qの競演が、音楽ファンをうならせた。今の若い世代にはピンとこないかもしれないが、赤丸急上昇中の人気バンドだった。そして、フェスで先陣を切ったこの人も。安室奈美恵さんである

 デビューして3年の弱冠17歳。ダンスユニットのスーパーモンキーズを伴い、既に世に放っていたヒット曲で2万5千人の会場を揺らした

 茶髪のロングヘアに細眉、ミニスカート、厚底ブーツ。後に「アムラー」現象を巻き起こす姿で、ワジキの舞台に立っていた。一気にスターダムへと駆け上り、はや23年になる。もうすぐ41歳。彼女はきょう、引退する

 ファッションだけではない。アルバム販売では、10~40代の4年代で連続ミリオンセラーという前人未到の金字塔を築いた。「歌姫」のどこに陰りがあろうか。惜しむ声がやまない

 「ステージに戻ることはない」と先日、NHKのインタビューで断言した。今はただ、ありがとうと言おう。でも翻意はいつでも大歓迎。どうぞ懐かしいワジキで、とひそかに望むのである。