四国霊場八十八カ所の歩き遍路を経験した全国の人々が集っていたバー「曼陀羅(まんだら)」(兵庫県西宮市)で親しまれた屏風(びょうぶ)が、阿南市新野町秋山にある22番札所の平等寺に奉納され、近く本堂に飾られることになった。3月末で閉店した曼陀羅に代わり、今後は同寺で屏風を囲む交流会を定期的に開く。
屏風は木製で高さ約2・5メートル、長さ約6メートル。漆が塗られており、その上から山水画を彫って着色されている。
バーを経営していた森晴美さん(65)=西宮市結善町1=が所有していたが、長女の喫茶店を手伝うため、3月末に閉店。屏風の受け入れ先について、店を訪れたことがある谷口真梁(しんりょう)副住職(37)に相談したところ、奉納を快諾してくれた。
森さんは1992年、京都市の古美術店の倉庫に眠っていた屏風に一目ぼれして購入した。屏風が飾れる店を開こうと考え、同年9月に曼荼羅をオープン。歩き遍路も始め、7年間かけて四国八十八カ所を巡った。
99年には、歩き遍路の体験を記した「女へんろ元気旅」を出版。本を読んだ歩き遍路経験者たちが店に集まり始め、いつしか「第89番札所」と呼ばれるようになった。森さんは「多くの人々と交流できたのは屏風との出合いがあったから。新たな地でお遍路さんに大切にされることを願っている」と言う。
谷口副住職は「森さんの思いを受け継ぎ、森さんのバーのように、歩き遍路を愛する人が集まる場にしていきたい」と話している。