誰もがいつしか、この世を去っていく。分かりきったことを意識し始めたのは、小欄ががんを患ってからだ。死があるからこそ、「生」がいとおしくもなる

 個性派俳優で人気の樹木希林さんは乳がんを告知され、2013年に全身転移を告白した。以降、その言動に耳を澄ますようになった

 樹木さんはがんになって整理を始める。撮影が終わると、台本は処分。衣類や食器など1日1点は捨てるようにしていたという。<意識はしていないけど、死に直面してから演技が自然と変わってるんだろうと思う・・・いつの間にか消えているっていうのが理想でね>。独特の死生観を述べていた

 来月13日公開の映画「日日是好日」では、お茶の先生役を務めた。原作者森下典子さんにとって忘れられない一つは、初めてのお点前の稽古後のシーン。お茶って形式主義なんですね、と聞く主人公らを笑顔でこう諭す。「何でも頭で考えるから、そんなふうに思うのよ」

 所作もせりふ回しも、すっかり先生になりきっていたのに驚いたという。森下さんは先日の本紙「滴翠クラブ」で撮影の余話を披露したが、それから間もなくして樹木さんは逝った

 75歳。がんを患ってからの「生」は、一層輝いていたように見えた。晴れの日も雨の日も、つらくても悲しくても一日一日は好日だったのかもしれない。