安倍晋三首相(総裁)と石破茂元幹事長の一騎打ちとなった自民党総裁選は、最終盤を迎えた。事実上、日本の次のリーダーを選ぶ選挙である。それにしては、盛り上がりに欠けていないか。

 理由はさまざま考えられる。一つは、安倍氏の連続3選が揺るぎそうにないからだろう。

 国会議員票と党員・党友による地方票、それぞれ405票のうち、安倍氏は議員票の8割以上、345票前後を押さえたとされ、石破氏を引き離している。勝敗の帰趨はおおむね決した観がある。

 しかし、見どころがなくなったわけではない。注目したいのは地方票だ。一般党員の動向は、「安倍1強」になびく議員票より、世論に近いといわれる。

 安倍氏は圧勝し、政権の勢いに弾みをつけたい考えだ。批判票の受け皿となって、石破氏がどこまで食い下がるか。来年は春に統一地方選、夏には参院選を控えている。石破氏の獲得票数次第では、安倍政権の強権的な政治手法も、厳しく問い直されることとなろう。

 共同通信社が14、15の両日、地方票を持つ党員・党友を対象に実施した支持動向調査では、安倍氏に投票するとの回答が55・5%、石破氏は34・9%だった。

 地方票でも安倍氏がリードを保つが、7、8両日の前回調査から5・5ポイント減らした。逆に石破氏は6・3ポイント増やし、追い上げた格好だ。新たに徳島、宮崎で安倍氏を上回る支持を集めている。

 盛り上がりに欠けるもうひとつの理由は、両氏が国民の疑問に答え切れていないことだろう。

 14日にあった日本記者クラブ主催の討論会では、憲法9条改正を巡り、安倍氏は「自衛隊を書き込むことで違憲論争に終止符を打つ」と早期実現に意欲を示した。これに対して石破氏は「国民に理解してもらう努力が要る」とし、改憲の進め方や手法の違いが明確になった。

 経済政策や地方再生、防災でも違いがあるが、その後、論戦が深まったとはいえない。両氏の対決の場が少ないのも一因だが、安倍氏の弱点ともいえる政治姿勢を、石破氏が攻め切れていないことも大きい。

 森友・加計学園問題など追及の材料には事欠かない。だが陣営に加わった参院竹下派に配慮し、得意の弁舌の切れ味は鈍い。「正直、公正」に国民の関心を代弁すべきではないか。

 1強の弊害を顕著に示す事態も起きている。石破派の斎藤健農相に「石破氏を応援するなら辞表を書いてからやれ」と迫った議員がいるという。事実とすれば許し難い。

 自由闊達に議論し、まとまるときにはまとまる。それが自民党の強みだったはずだ。物言えば唇寒し。そんな空気が党内にまん延しているのなら、この総裁選は、それを変える機会でもある。