16日未明に熊本地震の本震で倒壊し、東海大生1人が犠牲になった熊本県南阿蘇村のアパートに、藍住町出身の山口涼風(すずか)さん(21)=同大農学部4年=が住んでいた。アパートを離れていて難を逃れ、一時帰郷した山口さんは「生きて帰って来られたので、できることを全部やりたい」と命の重みをかみしめている。
山口さんは地震発生の1時間ほど前に自宅アパートを出て、近くにある友人のアパートにいた。「余震か」と思った瞬間、強烈な揺れに見舞われた。幸いけがはなく、周りの部屋の安否を訪ねて回った。
間もなく、別の友人からスマートフォンにメッセージが届いた。「生きてる?」。外に出ていることを伝えると「涼風ちゃんの家ないよ」と返ってきた。
すぐに戻ろうとしたが、道路には電柱が倒れ、電線が垂れ下がっていた。橋と道路には段差ができ、辺りは停電で真っ暗。危険と判断し、近くの小学校跡地で一夜を明かした。
夜明けとともに自宅に戻ると、住んでいた1階は押しつぶされ、2階が1階に見えた。「部屋にいたら死んでいた」
閉じ込められた人の救助に当たるレスキュー隊の大声に交じり、がれきの下から助けを求める声も聞こえた。「言葉も出ず、何も考えられなかった」。それでも、レスキュー隊が取り除いたがれきを運ぶのを必死に手伝った。
自室はつぶれ、家財道具など生活の全てはがれきに埋もれたまま。大学は建物にひびが入り、講義の再開は6月。就職活動はおろか、元の生活に戻れるのかさえ見通せない。
避難所として開放された大学の体育館で過ごした後、4月19日に帰郷。連絡を取り合っていた城東高校時代の同級生で熊本大4年の牧野綾海(あやみ)さん(21)=熊本市、鳴門市大麻町出身=も4月22日に帰ってきたため、徳島で一緒に募金活動をすることにした。少なくとも4月いっぱいは徳島駅前に立とうと考えている。
山口さんと牧野さんは「被災地では余震や生活の不安もある中、友人や多くの被災者が過ごしている。少しでも力になりたい」と話し、募金への協力を求めている。