米朝交渉が膠着状態にある中、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による首脳会談がきのう、北朝鮮の平壌で始まった。

 文氏が、非核化への具体的な措置を引き出し、局面打開につなげることができるかが最大の焦点だ。その成否は、米朝首脳の再会談実現を左右することにもなるだけに、責任重大である。

 会談で文氏は、核計画申告や査察受け入れなどを促す方針だ。これに対し、金氏は朝鮮戦争の終戦宣言の早期採択を求めるとみられる。

 金氏は、先の韓国特使団との会談でトランプ米大統領の1期目の任期内に非核化を実現したいと表明した。しかし、その「本気度」には懐疑的な見方もある。

 非核化の具体的措置が取られなければ、終戦宣言や制裁の緩和・解除は不可能だ。文氏は、そのことを強く訴えて説得しなければならない。

 ただ、非核化の行動を受け入れさせたとしても、両氏だけの席でなく、記者会見など公式の場で対外的に表明させることも必要だろう。

 両氏が会うのは4月27日、5月26日の板門店会談に続き3回目となる。4月に署名した「板門店宣言」では、朝鮮半島の軍事的な緊張緩和へ努力することで一致、終戦宣言の年内実現を明記した。

 ところが、米朝交渉の停滞で南北の対話路線も行き詰まりをみせている。

 韓国内では南北融和や核問題解決に向けた高揚感が冷め、厳しい経済状況などを直視するようになっている。国民は文政権に冷ややかな目を向け始めているのだ。

 こうした意識の変化は世論調査に如実に表れている。4月の南北首脳後に83%あった支持率は、8月末に50%台にまで急降下した。

 文政権の看板政策である南北問題で、これといった成果が出せていないからだろう。

 文氏としては今回の会談で、非核化へ向けた仕切り直しを図るとともに、支持率を回復させたいとの思惑もあるとみられる。

 懸念されるのは、北朝鮮への経済協力に前のめりなことだ。今回の訪朝団には、財界のトップらも加わっている。非核化進展に伴う制裁の緩和・解除を視野に、経済協力に向けた活性化策を話し合うためという。

 南北関係の進展を急ぐあまり、制裁圧力が緩むようなことがあっては困る。非核化に向けた行動で安易な妥協をしないよう求めておきたい。

 首脳会談はきょうも行われる予定で、日朝関係も取り上げられることになっている。

 北朝鮮が日本人拉致を認めた日朝首脳会談から16年がたつ。言うまでもなく、拉致問題が解決しない限り両国の関係改善はありえない。

 文氏は、拉致解決による新たな日朝関係や北朝鮮のメリットについて十分に説明してほしい。同時に、米朝だけでなく日朝首脳会談への仲介役としても期待したい。