紙芝居の制作に励む「おそめちゃん」メンバーと下岡さん(中央)=三好市池田町川崎

紙芝居の制作に励む「おそめちゃん」メンバーと下岡さん(中央)=三好市池田町川崎

 三好市山城町に残る妖怪タヌキ「青木藤太郎(とうたろう)」の伝承が電子書籍化されることになり、地元住民が書籍の基となる紙芝居作りに取り組んでいる。障害のある子どもたちへの読書サポートとして、伊藤忠記念財団(東京)が行っている電子図書普及事業の一環。完成後は全国の昔話と共に編集され、全国の特別支援学校などに配られる。

 「青木藤太郎」は、通行人を困らせる悪いタヌキを懲らしめて改心させたり、弘法大師の四国修行の道案内をしたりしたことで、後に神様として祭られるようになったと伝えられている。

 紙芝居は、地元伝承の掘り起こしに努める下岡昭一さん(80)=同市池田町川崎=が中心となり、地元女性4人でつくるグループ「おそめちゃん」と共に2016年初めから作っている。月1回のペースで集まり、日本画に使われる「顔彩(がんさい)」で着色。タブレット端末などの小さい画面でも見やすく、子どもが想像力を働かせやすいよう、シンプルな構成としている。

 昨秋、伊藤忠記念財団が「全国の昔話を電子書籍化したい」と県立図書館に協力を要請。同館は数多くの妖怪伝説が残る三好市山城町に注目し、下岡さんらに申し出た。ちょうど「青木藤太郎」の紙芝居作りに取り掛かっていたところだったため、電子書籍の題材に選んだ。

 財団は全都道府県の昔話を集め、「日本昔話の旅」として電子書籍化し、朗読する音声も収録する。秋ごろに全国の支援学校をはじめ、都道府県立図書館や医療機関など約1千カ所に配布する予定。

 制作メンバーの1人、古谷美由紀さん(65)=同市山城町大野、飲食店経営=は「幼いころに親から聞いた地元の話が形になり、全国へ広がっていくのはうれしいですね」と話している。