3年ごとにある自民党総裁選で、最初の投票で決せず、決選投票にもつれ込んだケースは過去4回ある。うち2回は、最初の1位が決選で敗れた。直近は前々回の2012年で勝者は安倍晋三首相。大本命の石破茂氏ら4人を退け、党員という党員がどよめいた
もう一つの逆転劇は1956年。敗れたのは岸信介氏、ご存じ安倍首相の祖父である。孫のリベンジ成就という因縁めいた結末も、6年前の驚きだった
安倍、石破の両氏が再び相まみえた今総裁選である。6年前と違い、断然優勢と伝えられていた安倍首相の圧勝に終わった。「安倍1強」をまざまざと見せつけた「横綱相撲」と言っていい
ただ、後味は...。石破氏支持の農相が、首相側から閣僚辞任の圧力を受けたと訴えた件。首相は圧力をかけたのが誰か特定するよう反論し、さらに「昔の総裁選はもっと激しい言葉があった」と。パワハラ容認のように聞こえたのは気のせいか
「相手への敬意を忘れず、常に淡々としてなければいけない」とは、元横綱大鵬の故納谷幸喜氏の持論。横綱の品格とは「泰然自若の精神」だと
首相は自著「美しい国へ」(文春新書)で、祖父について書いた。<世間のごうごうたる非難を向こうに回してその泰然とした態度>が誇りだと。時代は移れど、泰然は政治の横綱の品格でもあろう。