予想通りの結果となった。事実上の次期首相を選ぶ自民党総裁選で、安倍晋三首相が連続3選を果たした。石破茂元幹事長に所属国会議員票で大差をつけ、党員・党友による地方票でも制した。

 実績と安定が評価されたとの見方もあるが、それよりも派閥の組織力による勝利といった印象が強い。これからも「安倍1強」が続きそうだ。

 多数の信任を得たことで安倍氏は宿願の憲法改正や、安倍政治の総決算として各政策に取り組むことになるが、熟慮が必要なものもある。広く国民の声にも耳を傾けながら、優先順位を誤ることなく進めてもらいたい。

 総裁選を通して気になったのが、首相の政治姿勢や側近たちの言動だ。

 石破氏を支持する斎藤健農相が、首相の陣営から閣僚辞任の圧力を受けたとする問題が波紋を呼んだ。

 首相は圧力をかけた人物を明らかにするよう要求、石破氏は前財務次官のセクハラ疑惑のようだなどと応酬した。首相を支持する閣僚や党幹部からは圧力を擁護する発言もあった。

 これとは別に、同党の神戸市議が首相官邸の幹部からどう喝を受けたとフェイスブックで訴えた。

 首相は「自民党らしい格調ある選挙にしたい」と述べていたが、言葉通りに受け止めた人は多くないだろう。

 さらに、党も新聞・通信社に取材を規制するような文書を送付し、批判を受けた。

 残念なのは、そうした圧力や規制に、党員たちから正面切って問題視する声がほとんど聞かれなかったことだ。

 先の通常国会で指摘された首相の強権的な政治手法や、首相への忖度ぶりが変わっていないということか。そうだとすれば失望を禁じ得ない。

 自由に意見を述べ合う雰囲気を抑え込むような風潮が強まっているように見える。

 党内に不満が蓄積されれば、求心力を保つことはできない。融和、結束をどう図っていくか。改めて首相の指導力が問われよう。

 首相は憲法改正に強い意欲を見せる。9条で自衛隊の根拠規定を追加する案を掲げ、秋の臨時国会への提出を目指すとした。ただ、国民の間には拙速な憲法論議への抵抗感が強いことを肝に銘じてもらいたい。

 安倍政権の目玉である経済政策「アベノミクス」は開始から5年を超えた。日銀の大規模金融緩和を正常化させる「出口」への道筋を付けなければならない。

 財政健全化や社会保障制度改革に加え、来年の消費税率10%上げへの対応も急務だ。

 実績をアピールする外交面でも、政権の重要課題である拉致問題や北方領土問題などは進展しておらず、米国との貿易摩擦も先行き不透明だ。

 これまで掲げてきた政策や目標を、向こう3年間でどこまで推し進め、仕上げることができるか。残された時間は、さほど多くはない。