アカウミガメの産卵地として知られる美波町日和佐浦の大浜海岸。1950年、教員を務めていた日和佐中学校で生徒とウミガメの研究を始め、保護活動の礎を築いた。海岸が国の天然記念物になって50年の節目を迎え、「産卵地としての価値を多くの人に知ってもらえてうれしい」と感慨深げに語った。

 同町志和岐地区で生まれ、12歳まで過ごした。砂浜近くのため池で泳ぐウミガメや、ふ化して海へ向かう子ガメなどを毎年多く目にし、ウミガメは幼い頃から身近な存在だった。古老らから「ウミガメは海の神様の使い」と教わった。

 理科の新人教諭として日和佐中に赴任。その2年目に生徒が偶然、海岸でウミガメの死骸を見つけた。食糧難の時代で、誰かが肉を食べたとみられ、強い衝撃を受けた。「ウミガメの事を調べて世の中の人に知ってもらい、二度とこんなことがないようにしないと」

 飼育は前例がなく、試行錯誤の連続だった。「長生きするから成長するのも遅いだろう、と高をくくっていた」が、子ガメは1年で甲長20センチほどにまで成長。飼育していた漬物用のおけはすぐ小さくなった。生徒らの頑張る姿が、学校や町、地域の住民を動かした。校内に屋根付きのウミガメ専用プールを造ったり、取った魚を餌に分けてくれたりした。

 日和佐中では6年間で72人の生徒と調査や飼育を行った。同校を離れた後は阿南市の新野中や富岡中などに赴任。88年に阿南中校長で定年を迎え、退職後には講演や学校への出前講座などを行って、ウミガメの保護の大切さを伝えてきた。

 大浜海岸のウミガメの上陸数と産卵数は近年、減少傾向が続いている。「みんなが関心を持ち、大事にするという意識がなければいけない」と訴えた。

 阿南市学原町で妻、長男夫婦と4人で暮らす。趣味のテニスは現在も週3日、練習に励んでいる。89歳。