邪馬台国研究で全国的に知られる美馬市脇町出身の考古学者で郷土史家の笠井新也(1884~1956年)の業績を振り返る企画展が、31日から徳島市の県立博物館で開かれる。笠井の没後60年に合わせた催しで、遺族から寄贈された貴重な遺稿や収集資料など約50点を展示し、現在も高く評価されている研究成果に光を当てる。7月31日まで。
笠井は東京の国学院師範部国語漢文歴史科を首席で卒業し、県立高等女学校(現城東高)や長野県、大阪府で教壇に立った後、同郷の鳥居龍蔵がいる東京帝国大人類学教室の聴講生となって人類学や東洋考古学を学んだ。その後は再び帰郷して、脇町中学校などで教諭を務めた。
教職の傍ら考古学や郷土史の研究に打ち込み、文献や古墳の科学的検証から邪馬台国が大和(奈良県)にあったという説を体系的に打ち出したほか、卑弥呼の墓が同県の箸墓古墳であるとの説を初めて提唱した。県内に伝わる史実や伝説をまとめた「阿波伝説物語」や「阿波の狸の話」などの著書も残した。
企画展では、笠井が自身の集大成として執筆した「邪馬台国及卑弥呼研究」と「阿波伝説誌」の遺稿が紹介される。それぞれ400字詰め原稿用紙千枚以上の大作で、衰えない研究への情熱がうかがえる。
このほか、上野図書館(現国会図書館)の蔵書を書き写した資料や徳島市の城山貝塚の発掘ノートなど、研究過程を垣間見ることができる資料もある。
6月19日と7月10日のいずれも午後2時から、学芸員による展示解説がある。