安全に絶対はない。だとすれば、許されるリスクはどこまでか。原発の是非を巡って国論が二分される中、社会全体の問題として、改めて考えたい。

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じた昨年12月の仮処分決定について、広島高裁は四電の異議を認め、決定を取り消した。住民側は不服申し立てを行わない方針で、原発の再稼働が確定する。

 東京電力福島第1原発事故後、高裁段階で初めて原発の運転を禁じた仮処分決定は約9カ月で覆ったことになる。四電は10月27日に3号機を稼働させる。

 昨年12月の決定は、約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラで、大規模な「破局的噴火」が起きた際、火砕流が原発に到達する可能性を指摘していた。今回の決定は、そうした大規模噴火が起きる可能性が根拠をもって示されておらず、火砕流が到達する恐れも小さいとし、再稼働を容認した。

 ここで問題になっている「破局的噴火」の頻度は、日本の火山全体で1万年に1回程度とされる。阿蘇では約9万年前に起きている。

 同じ規模の噴火が発生すれば、周辺100キロは火砕流で壊滅、死者は1千万人を超えるとの研究もある。列島は火山灰で厚く覆われ、国家存亡の危機といえる災害となる。原発の安全性を問うには、いささか疑問の余地がないではない。

 発生頻度が著しく小さく、破局的な被害をもたらす災害のリスクは、社会通念上、無視し得るのではないか。12月の決定もそう指摘しつつ、原子力規制委員会が立地審査で用いる火山ガイドを厳格に適用して、運転の差し止めを命じた。

 それを受け、規制委はガイドの解説文書を公表し、巨大噴火については、原子力分野以外の法規制や防災対策も考慮していないことを挙げ、危険性は常識的に無視できるとしている。

 たとえ「常識的」であっても、そのまま当てはまらないのが原発だ。確実な万年単位の課題がある。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の問題である。

 地下深くに埋めて数万年先まで隔離する方針だが、処分場の候補地選定の手続きは進んでいない。原発は「トイレのないマンション」といわれるゆえんだ。

 動かせば出るごみの処理に数万年かかるのであれば、稼働の是非も同じスケールで考えるべきだろう。目先の経済的な理由から、いわんや電力会社の経営改善のために再稼働を急ぐといったことがあってはならない。

 伊方原発1、2号機は既に廃炉が決まっている。3号機に対する同様の仮処分は、高松高裁や山口地裁岩国支部、大分地裁でも係争中。四電は住民の根強い不安と、これからも真摯に向き合っていくべきだ。